ラグビーリパブリック

【花園予選】全国上位へもっと。東福岡、今年も聖地へ。筑紫も出し切った。

2018.11.10
先制トライを奪った東福岡WTB高本とむ。(撮影/椛本結城)

全力で戦い切った筑紫。最後まで自分たちの力を出した。(撮影/椛本結城)
 29回目の花園を決めた。
 今年も東福岡高校が東大阪の聖地へ向かう。
 19年連続とはいっても、初めて大舞台に向かう者だっている。もっと喜んでもよそさうなものだが控えめだった。
 藤田雄一郎監督が言う。
「まずは筑紫に勝つための準備をしてきたので、勝てて良かった。ただ、選手の表情がきょうの内容を物語っているのではないでしょうか」
 好敵手に勝ったのは嬉しい。でも、全国の頂点に立つにはまだ足りない。
 経験豊富な指揮官は分かっている。
 11月9日、福岡県の全国高校大会予選決勝。博多の森陸上競技場でおこなわれた決戦で東福岡と筑紫が顔を合わせた。60-15。完勝ではあるが、常勝チームは後半に3トライを許したのが納得できない。
 開始7分。ラックでのターンオーバーから左に大きく展開して、WTB高本とむがトライを奪い先制した。
 勝者は前半だけで4トライ。後半に入っても20分までにさらに4トライを重ね、持ち味のスピードを披露した。
 HO福井翔主将が言う。
「ブレイクダウンなどでの圧力をジャブに、最後は大きくボールを動かしてWTBでトライを取る自分たちの攻撃の形は出せたと思います」
 ただ、残り10分でモールから2トライを許したのが悔しい。
「筑紫はモールで来る。その対策はしていました。それでも取られた。自分たちの甘さです」(福井主将)
 指揮官は「リザーブの選手たちがスーパーサブになっていない。先発の選手たちと、まだ力の差がある」と途中出場組の奮起を促した。
「残り1か月半で修正します。選手たちがどれだけ危機感をもって取り組めるか。全国のベスト8、ベスト4、決勝。その土台の上にはのれていると思うのですが、ゲーム運びなどをもっとうまくやらないとそこでは勝てない」
 大会開幕までに個々の体重を2キロほど増やしたいと言った。
 持てるものは出し切った。
 敗れた筑紫だが、力の限りを尽くしたから下は向かなかった。
 CTB今村泰士主将は、「やれることはやりました」とさっぱりした表情で言った。
「この日のために準備を重ねてきました。でも壁は厚かった。通用するところもありましたが、やりたいプレーを続けられてしまいました」
 それでも筑紫魂を観る人に伝えた。トライしても必要以上に喜ばず、全員でサッと自陣に戻る。この試合でも主将自ら、部の伝統を守った。
 今村は小学4年時、RFC筑豊ジュニア.でラグビーを始めた。中鶴少年ラグビークラブでプレーを続けていた中学時代は福岡県選抜に選ばれ全国ジュニア大会にも出場。東福岡への進学も考えた。
 しかし、父・好彦さんの「ラグビーだけでなく、文武両道を追い求めたら人間としても成長するのではないか」と助言され、進学先を変える。
「モールは、自分たちの武器。それを軸に戦おうと決めていました。そのモールで2本のトライを取れた。筑紫のこれからにつながると思います」
 キャプテンは試合後、東京に向かった。関東の大学に進学するため、日曜日に推薦入試を受ける。
 前日まで没頭した青春の日々は、きっと人生の節目で生きる。
Exit mobile version