大会MVPにも選ばれた石見智翠館の鈴木侑晏(ゆあん)。(撮影/松本かおり)
初代女王に輝いて喜びに浸る石見智翠館。(撮影/松本かおり)
抜けるような青空が心地よかった。
立派になった埼玉・熊谷のラグビーワールドカップスタジアム。緑の芝を、カラフルなジャージーが駆け回った。
10月28日、前日から開催されていた第1回全国U18女子セブンズ大会の決勝トーナメントがおこなわれた。
出場したのは全国各ブロックから選考された12チーム。最上位のカップトーナメント(1〜4位)では石見智翠館が福岡レディースを17-0で破り、頂点に立った。
女子7人制ラグビーの国内サーキット大会、「太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ」に2019年度大会から高校生が参加できなくなる。従来4月に開催されていた「全国高校女子セブンズラグビーフットボール大会」の開催時期を見直そう。これらを背景に、新たに誕生した大会だ。
その舞台で、太陽生命シリーズで揉まれ続け、全国高校女子セブンズ大会で最多優勝の成績を誇るチームが勝ち切ったのは当然だったのか。
石見智翠館を率いる磯谷竜也監督は、「選手たちは重圧を感じていたようです」と話した。
プールマッチで勢いを感じさせたのは福岡レディースだった。
サクラセブンズとして国際舞台も経験している永田花菜を中心に、高い攻撃力を発揮した。北信越選抜を58-0、強豪・國學院栃木を41-7と圧倒してプール戦を終えると、カップトーナメント準決勝でも追手門学院に32-5と快勝して頂上決戦に勝ち進んだ。
石見智翠館もプールマッチの東北選抜戦、SCIXラグビークラブ戦をそれぞれ52-0、49-0と勝ち、カップ準決勝でもBRAVE LOUVEを38-0と一蹴。充実の足どりを見せた。
ファイナルは、ビッグプレーから始まった。
集中力高くゲームに入った石見智翠館がラインブレイクからトライラインに迫る。大谷芽生がクラウンディングしようとしたところに福岡レディースの永田がトライセービングタックル。ギリギリのところでノックオンを誘ったのだ。
互いの気持ちが伝わってくる瞬間だった。
立ち上がりの先制機を逃した石見智翠館。しかし、主導権は渡さなかった。
磯谷監督が言う。
「ディフェンスから自分たちのラグビーをやろう。いつもそう言っています。この試合でも、そのスタイルをやり切ってくれました」
勢いのある福岡のアタックに一歩も引くことなく、ハードに止め、流れを引き寄せた。
3分に鈴木侑晏がタテに走って先制トライ。6分にはラインアウトからのムーヴで右タッチライン際を攻略。今釘小町がインゴールに入った。
12-0とリードして入った後半も杉本七海(2分)のトライで加点し、勝負を決めた。
敗れた福岡レディースの平野勉監督は、「すべての面で智翠館が一枚上だったと思います。ディフェンスから攻めようと言っていましたが、食い込まれていました」と勝者を称えた。
先制トライを挙げた石見翠館の鈴木は、「タテに出るのが好きなので」といつも通りのマインドで決戦を戦ったと伝えた。
磯谷監督は選手たちのパフォーマンスに胸を張った。
「チャレンジャーであり続けよう。そう言い続けていましたが、その通りのプレーをしてくれました。序盤のいいディフェンスでペースを掴んだし、太陽生命(シリーズ)でも使わなかったラインアウトからのサインプレーも決めた。あれ、この大会のためにとっておいたんですよ。せっかくのプレー。第1回大会で優勝するために、ここ、というときに使おうと。これまで、他の大会でもなかった『初代女王』にどうしてもなりたかったので」
勝たなければいけない圧力を集中力に変えた見事な優勝。5試合すべてに完封勝ちしたところにも大きな価値があった。