ラスト10分間の2連続トライで、7点差まで追い詰めた。しかし、届かなかった。拓殖大学の副将、PR山中悠暉の目には光るものがあった。
「勝てた試合だったと思います。追いつかなかったことが悔しくて」
関東大学リーグ戦1部は10月21日、埼玉・熊谷ラグビー場で2試合をおこなった。改修後初の学生試合となった第1試合では、流経大が0勝3敗の拓大を40−33で下し、開幕4連勝とした。
前半はハンドリングエラーやスクラムでの反則により、得点機を逃した流経大。後半10分まで9点ビハインド(12−21)だったが、後半11分から怒濤の4連続トライ。
まずショートパントを捕球し、WTB中根陵登につないでスコア。同14分にはCTBヴィリアメ・タカヤワが逆転トライ。さらに同19分に途中出場のHO山川遼人、そして同25分にLOサリミ緒巳人がトライラインを越えた。
後半最初の9点リードから一転、19点ビハインド(21−40)を背負うことになった拓大。
しかし後半30分、LOシオネ・ラベマイがラインアウトモールから抜け出してスコアラーとなり、的確な判断が光る司令塔・SO小野龍輝のコンバージョン成功で、12点差(28−40)に。
さらに拓大は後半38分、敵陣ゴール前スクラムで強力に前進。スクラムを足場に、最後はCTBクイントン・マヒナが貫いて左中間に押さえた。しかし最後はミスが重なり、リーグ戦今季初勝利はならなかった。
この日、流経大が苦しんだ理由のひとつは、フロントローにPR河田和大、HO渡部正一、PR山中を並べた拓大スクラムの奮闘だった。指揮官の遠藤隆夫監督が「今年も力を入れている」というスクラムからペースを握った。
「前半はセットプレーが安定しなくて、フォワードで圧倒できませんでした。後半は圧倒しようということでした」(PR山中)
拓大は前半8分のスクラムでペナルティを奪ってからは、80分間出場したフロントローを軸に、スクラムバトルで優勢。流経大はアングルの反則を取られるなどし、たびたび自陣へ後退した。
「スクラムは1年生の頃から遠藤監督に教えてもらっています。週によって違いますが、スクラム練習は必ずやっています」
花園常連校の山梨・日川高の出身。逆三角形の上半身を持つ178センチ、107キロの22歳は、河口湖南中(山梨)では野球部だった。
「河口湖の中学で野球をやっていたのですが、身体を動かそうとオフにラグビーをやったら、(日川)高校に誘われました」
中学3年の夏、富士北麓公園でおこなわれた試合に出場した。楕円球に触って1か月も経っていなかったが、態度などの姿勢面も評価され勧誘された。
「中学のときは身長175センチ、体重82キロくらいでした。ルールも分かっていなかったんですけど試合は頑張りました」
入学した日川では高校1年からプロップ。それからプロップひと筋で、今年7年目を迎えた。
自身のスクラムワークは長所のひとつだが、「あとはフィットネスが強みです」。現代ラグビーにフィットするプロップとして、大学ラストシーズンに挑んでいる。
「(拓大は)フォワードが強みのチームなので、フォワードで圧倒して、バックスを助けながら、あと3試合勝ちたいです」
拓大の次戦は10月28日。熊谷ラグビー場Bグラウンドで、日本大学と相まみえる。集大成となる大学ラストシーズン。プロップひと筋の山中が7年間の想いをぶつける。
(文:多羅正崇)