東海大ラグビー部4年で日本代表経験のあるテビタ・タタフが、故障から復帰するや大暴れした。
10月20日、神奈川・東海大グラウンドでおこなわれた関東大学リーグ戦1部の専大戦にNO8で先発し、攻守で持ち味を発揮。初の大学選手権優勝に向け、盟友でCTBのアタアタ・モエアキオラ主将をサポートしたいという。
「大学のラグビーは最後なので、楽しみたいです」
目黒学院中に3年で編入し、同高を経て東海大入りした。2016年には若手主体の日本代表に入ってテストマッチデビュー。2017、18年は2年連続でジュニア・ジャパン入りし、3月のパシフィック・チャレンジで環太平洋諸国の有望株とぶつかり合っている。将来が嘱望される1人だ。
もっとも再三の負傷にも泣かされていて、木村季由監督いわく「毎年、選手権の頃には100パーセントでゲームができなかった」。今年も夏合宿中のトレーニングマッチで、肩を痛め離脱した。
もう、同じ轍は踏ませたくなかったのだろう。木村監督は、ラストイヤーにかける教え子に最善の道を示さんとした。9月16日に始まったリーグ戦の序盤3試合に、タタフを出さなかった。
「大事を取っていたところもあった。完璧に治すまでは無理をさせなかった。今年は最後のシーズンですから、ピーキングを持っていきたいなと」
当の本人は、「一番大事なのは、怪我を早く治すことでした」。ファーストジャージィを着てプレーしたのは、流経大に28−24で勝った6月17日の関東大学春季大会Aグループ・第5戦以来(神奈川・ニッパツ三ツ沢球技場)。早速、本来の持ち味を発揮する。
守っては接点の球に絡むジャッカルを連発。特に決定的だったのは後半3分頃の一撃だ。敵陣22メートルエリア右の専大スクラムから、相手NO8の志賀亮太が抜け出したエリアをタタフがカバーする。タックルに倒れた志賀のボールへいち早く食らいつき、遅れてやって来た専大サポート群の体当たりにも負けず、ターンオーバーを決めた。東海大はすぐに逆側へパスを回し、モエアキオラが後半先手となるトライをマークする。試合中盤のスコアを31−8と整えた。
軽く腰を落として腕を球に絡めるタタフのジャッカルは、その前後の場面でも炸裂。球を手放さないノットリリースザボールの反則を誘い、木村監督に「規格外」と言わしめた。
「練習で学んだことを試合でもやりました。練習でやったことを試合で出せるようにしたい」
攻めては前半こそエッジと呼ばれるグラウンドの端側に立っていたが、後半からは「プレー中にコミュニケーションを取って中に入ったり」。持ち前の突破力を多くのシーンで活かすよう心掛けた。73−15での開幕4連勝を下支えしたのだった。
「楽しかったです。久しぶりのゲームだったので」
今後の課題はフィットネスとペナルティマネージメントだ。
タタフは練習を離れていた間に体重が増えたようで、専大戦での登録上は「183センチ、125キロ」。現在はこの数字より下回っているようだが、代表入り時の「110キロ」に比べるとやや重い。
持久力やキレとの相関関係のありそうなウェイトコントロールについて、木村監督は「ダイエット命令を出しました。もともとスピードもある選手なので、そこ(身体のキレ)はシーズン後半に上げていきたい」。当の本人も、さらなるシェイプアップの必要性を語る。
「これからの生活で体重を絞れたら。ご飯のバランスを考えて。チームが(ボールを)動かすラグビーをするから、もっと動けるように」
ペナルティマネージメントとは、得意のジャッカルが反則と見られる傾向への対処だ。専大戦でも首尾よく球に絡んだシーンを妨害行為とみなされたことがあり、モエアキオラ主将は「(判定への対処が)難しいところもありましたけど、そこを自分たちでコントロールできるようにしないと」。当日の担当レフリーの笛の傾向を早い時間帯で察知することで、タタフが球を奪いに行く際の反則数を最小化したいという。
今季の東海大では、モエアキオラ主将が先頭に立つ。タタフにとっては、一緒にトンガから来日して目黒学院中、高時代も時を共にした盟友だ。友人の主将就任に「うれしい。自分がどれだけサポートしていくか」と意気込んでいたタタフは、グラウンド内外でモエアキオラを支える。
なにせ、主将の母国語が分かる唯一の部員なのだ。試合中もついモエアキオラとトンガ語で話し合ってしまうというタタフは、「皆と話す時は、日本語で」。2人がトンガ語で話し合ったことを、どちらかが日本語で皆に伝えることもありそうだ。
「日本一を獲るだけ。死ぬ気で、練習する。自分から皆に話したりもして、プレーも練習もオフ、寮生活も使っていきたいです」
ストレートな日本語でこう言い切ったタタフ。卒業後は国内最高峰のトップリーグに挑む予定だが、まずは学生生活の集大成を表す。
(文:向 風見也)