ラグビーリパブリック

トヨタ自動車で6戦6トライの岡田優輝、トップリーグも幼なじみと一緒。

2018.10.17

NTTコム戦でマン・オブ・ザ・マッチに選ばれた岡田優輝(撮影:?塩隆)

 子どもの頃からボールを追いかけていた仲間たちと、トップレベルの舞台でしのぎを削る。トヨタ自動車の岡田優輝は、よくできたフィクションのようなリアルを生きている。
 出身の伊丹ラグビースクールで一緒にプレーしていた喜連航平、前田剛、梶村祐介も今春からそれぞれNTTコム、神戸製鋼、サントリーに加わり、国内最高峰のラグビートップリーグに挑戦中。なかでも岡田は、かつて南アフリカ代表を率いたジェイク・ホワイト監督に「ラグビー理解度」を認められている。開幕から6戦連続で先発中だ。
 以前からの友人のうち、サントリーの梶村とは開幕節で対戦。喜連や前田とも、いつかは同じフィールドに立ちたいと思っている。
「小学校から本当に仲がいい選手たちと同じトップリーグという舞台でやらせてもらっている。いい刺激をもらっています」
 確か、煙草を耳から入れて鼻から出す、だったか。
 岡田が5歳だったある日、4人が通っていた白ゆり幼稚園の垂優園長が手品を披露。「仕掛けが分からない子はラグビーをする」という約束をしていた結果、皆、揃って楕円球を追うことになった。垂は、伊丹ラグビースクールの創設者だった。
 友だちとラグビーをするのは、楽しかった。小学生になった岡田たちは、週末になれば午前中は伊丹ラグビースクールの練習に出て、午後は近所の公園で自分たちだけでボールを追いかけた。
「いま考えたら何をしてるのかなと思うんですけど、本当にラグビーが楽しくて。ずっとサインプレーを考えたりしていました」
 BKの複数ポジションをこなせる岡田は、大阪桐蔭高、帝京大で活躍。20歳以下日本代表にもリストアップされた。もっとも当の本人は「周りに比べたら能力はまだまだ」。仲の良かった梶村は、報徳学園高3年時に日本代表の練習生になっていた。友人に先を越された感覚も手伝ってか、謙虚さを保っている。
 トップリーグではここまで6トライをマーク。ホンダのレメキ ロマノ ラヴァ、トヨタ自動車のヘンリー ジェイミーに続く3位タイの成績だ。上位2名は日本代表への合流により最後の第7節を欠場するだけに、逆転でのリーグ戦トライ王獲得も見えてきた。
 当の本人は「自分もそういうところを目指してやっているところがある」としながら、最後は気を引き締める。
「まずは一戦、一戦、大事にする。次の試合にコンディションを合わせたい」
 身長181センチ、体重93キロ。攻守で渋く光る。
 10月13日、東京・秩父宮ラグビー場でのトップリーグ第6節では、喜連を欠くNTTコムと対戦。前半20分、38分、後半11分と3度インゴールを割り、38−36で勝った。
 特筆すべきは、トライまでの過程だ。1本目ではパスの出し手の背後から飛び出すような動きを繰り出し、2本目では接点とパスの出し手との間に駆け込んでスペースを攻略した。防御網の死角を効率的に突くべく、球をもらう前からアンテナを張っていた。
 ボールをもらった瞬間を「そこ」と表現し、得点場面を振り返った。
「そこに自分が顔を出せた、そこでプレーができたというのはポジティブに捉えています。ボールを持っていない時にどれだけ動けるか、だと思います。WTBなので、視野を広げてどこにスペースがあるのかが見える」
 後半30分頃には危機管理能力も示す。味方がハーフ線付近右のラインアウトでミスを犯すや、相手の蹴り込んできたキックに反応。立っていた自陣10メートルエリア右から一気に同22メートルエリアに駆け戻り、転がる球を拾い上げる。迫りくるタックラーを次々とかわし、捕まった後も自軍ボールをキープ。ホワイト監督が、トライシーン以上にほめたたえたシーンだった。
「スペースのチェックをするのが自分の仕事。極めていきたいところではあります」
 手品の仕掛けに気づかなかったのをきっかけに、グラウンド上の機微に気づく選手に成長した岡田。今後も幼なじみとの対戦を心待ちにしながら、日本代表入りを狙う。
(文:向 風見也)
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