関東大学ラグビー対抗戦Aで昨季3位の慶大は、9月30日、東京・江戸川陸上競技場で同5位の筑波大に35−24で勝利。もっともSOとして先発の古田京主将は、明るさの帯びた談話に反省点も織り込んでいた。
「まずはしっかり勝てて次の試合を迎えられるということはすごく良かったと思います。前半と後半の頭までは自分たちのラグビーができた。ただこれから先は、80分間、自分たちのラグビーができないと勝ち抜いていけない。いい課題をもらったと思って、これから日吉(本拠地)に帰って練習したいです」
キックオフ早々に先制トライを許した慶大だが、前半は快調なペースで試合を運ぶ。接点周辺へFW陣が相次いで駆け込み、筑波大防御網のひずみを巧妙にえぐる。特にFLの川合秀和は自陣深い位置からも的確な走路を見つけ、大きな突破を繰り出す。LOの辻雄康副将がまとめるモールも冴え、慶大は28−7とリードしてハーフタイムを迎える。後半8分にもこの日チーム5トライ目を挙げ、ほぼ勝負を決めた。
ところが以後は、要所での反則、落球などでわずかずつ先方にチャンスを与える。筑波大が息を吹き返したこともあり、後半24分以降は17失点と沈んだ。うまく戦えない時間帯について、古田はこう振り返った。
「ディフェンスで粘れている場面も多かったんですけど、そこでターンオーバーしたボールを僕を中心としたBKがうまく使えなかった。せっかく獲ったボールが相手ボールになって返ってくるということがあった。そこはしっかり反省したいと思います。ターンオーバー(したボール)の使い方については、(試合をしながら皆で)話してはいたんですけど、それがうまくいかなかったというところです」
確かに試合終盤、自陣深い位置で相手ボールを奪いながらその直後の攻撃中に球を失ったり、陣地の取り合いで好キックを蹴られたりと「粘れている場面」の次のシーンで立ち止まることがあった。今季は大学選手権9連覇中の帝京大などに競り勝ち1999年度以来の大学日本一を果たしたいだけに、クオリティチェックへのまなざしは厳しい。
「これからは一個一個のプレーの成否が勝敗を分けると思うので、そこにこだわる。きょうは『80分間、自分たちのラグビーをやり続ける』という課題が残ったので、『いかに悪い流れを断ち切るか』みたいなところをいっぱい考え、いっぱい練習していきたいです。練習はとてもハードにやっているので、そこでいいプレーを継続できるかというところを見ていきたいです」
それにしても、古田主将の言葉は端的で明快だ。体育会系の部員には珍しい医学部在籍という肩書きを取り払っても、生来の賢さがにじむような。もっとも、かような仮説に対する渡瀬裕司の見解がふるっていた。
かつて慶大のゼネラルマネージャーを務め、いまは慶大を支える慶應ラグビー倶楽部の強化委員長やスーパーラグビーのサンウルブズのCEOも務める渡瀬は、古田主将にいつも言っているというフレーズを明かした。
「自分で賢いと思ったら、終わりだからね」
きっと古田主将は、己に限界を定めず悲願達成へまい進するだろう。
(文:向 風見也)