アジア大会での本村と加納(右)。苦い経験を経てリーダーシップを発揮し始めている
(撮影:出村謙知)
ジャカルタでの香港に対する完封負けから、ちょうど1か月。
男子セブンズ日本代表にとっては、9月29、30日に韓国・仁川で開催されるアジアセブンズシリーズ第2戦はアジア競技大会(以下、アジア大会)で味わった屈辱からのリベンジバトル第2弾となる。
すでに、2週間前の同シリーズ第1戦・香港大会では、決勝で地元・香港を12−0の完封勝ちで返り討ちにして、リベンジ第1弾は完璧なかたちで果たしてみせた。
それでも、日本には韓国でも絶対に負けられない理由がある。
昨年の同シリーズでも第1戦の香港では優勝。ところが、続く仁川大会では決勝で韓国に敗れ、準優勝に甘んじた。
「ワールドカップセブンズ(以下、RWCセブンズ)でベスト8、アジア大会は金メダル」
岩渕健輔ヘッドコーチは、今年5月におこなわれた就任会見で今季の目標をそう公言したが、7月のRWCセブンズでは15位、前述のとおりアジア大会でも4連覇はならず銀メダルにとどまった。
次季オリンピック開催国の代表チームとしては、やや低調な成績の国際大会が続いているのは否めないだろう。それだけに、今季のアジアシリーズでは2年を切った東京オリンピックへ向けてのポジティブな再スタートを印象付ける“完全制覇”が求められている。
メンバー的には、RWCセブンズ、アジア大会と大きな国際大会が続いたことなどによる選手のコンディションなどもあって、RWCセブンズ、アジア大会とも異なる選手構成で同シリーズを戦っている。
RWCセブンズ、アジア大会から続いてアジアシリーズにも参加するかたちになっているのは、坂井克行、副島亀里ララボウ ラティアナラ、加納遼大、そして、香港大会は不参加だった橋野皓介も韓国大会前に合流。アジア大会の敗戦のあと、坂井が「しっかり話し合った」という副島が主将を務めている。
この4人以外に、アジア大会でもプレーして、今回の韓国大会へ臨むメンバーとしては本村直樹がいる。坂井、副島、橋野という百戦錬磨と言っていい30代のベテランに対して、加納と本村は26歳。共に、アジア大会決勝ではチームへの貢献ができなかったとの思いが強く(本村は後半2分過ぎからの途中出場、加納は出番なし)、今シリーズでのリベンジに特に燃えている。
「(アジア大会は)準決勝(対スリランカ)、決勝と試合に出られなくて、3歳からラグビーをやってきて、一番悔しい大会になった。日本は『自分たちはチャレンジャー』という気持ちでいかないと、勝てない。アジア大会を通じて学ばせてもらった」(加納)
「(途中出場した時)自分がどうにかしてやろうというのはあったが、チームがどう変えたらよくなるかというのはあまり考えていなかった。自分がいいプレーをして変えようというだけで、チームに対してどうしようというのがなかった。自分の中ではそれが反省点」(本村)
去る9月15日。香港に対する完璧なリベンジを果たすことになった香港大会決勝では、途中出場した加納と本村が、終盤、日本陣に攻め入った香港に対して必死にタックルを繰り返したことが、ノートライに抑えての返り討ちにつながった。
試合中の気持ちが入ったプレーぶりだけではなく、「『次は俺が』という気持ちは強いだろうし、以前と違ってリーダーシップを発揮しはじめている。変わってきた」(坂井)と指摘されるように、練習の時から自発的に声出しをしながら自分たちでチーム全体を引っ張っていく姿勢も前面に出てくるようになっている。
「年齢も上から2、3番目。いつまでも坂井さんとか年長の人に頼ってばかりじゃなく、僕らがしっかりリーダーシップを持って底上げしていかないとチームは強くならない」(加納)
ベテラン組や海外出身組に頼るだけではなく、自らがリーダーシップを取っていく必要性を実感し、グラウンド内外で実践し始めた26歳コンビ。当然ながら見据えているのは1年と10か月後にやってくる世界最大のアスリートの祭典だ。
「東京オリンピックがあるこの年代に自分がプレーできているのは幸運だし、一番の目標。チーム(Honda)でも『7でオリンピックに行け。絶対に』と言われている」(本村)
「このチームで東京オリンピックまでいく」(坂井)ことを絶対的な目標として、ベクトルを自分だけではなくチーム全体に向け始めた和製セブンズスペシャリストたちが、アジアでのリベンジバトルで成長した姿を見せ続ける。
(文:出村謙知)