昨季、加盟する関東大学リーグ戦1部で8チーム中4位に終わった法大は、今季開幕節で白星発進。4年生WTBの中井健人は、部内環境の健全化に手ごたえを感じている。
9月16日、長野Uスタジアム。昨季5位の中大を43−10で下した。陣地の取り合いで後手を踏んだ前半は12−10と競ったが、大外のスペースの攻略を意識した後半は、着実に加点。19−10とリードを広げて迎えた22分には、敵陣22メートルエリア右の自軍スクラムの脇を中井が直進。FLの吉永純也のトライを演出した。
さらに続く25分も、エース格の中井が勝負をかける。
「ずっと中大と競っていた。あそこは流れを変えなきゃいけないと思って、自分のサインを指示しました」
自陣中盤右タッチライン際でその「サイン」を出すと、法大は左から右へ移動したSOの金井大雪を起点に展開。パスを受け取った中井は持ち前の快足を飛ばし、敵陣深い位置へ進む。最後は折り返しのパスがつながった先で金井がとどめを刺すなどし、33−10とほぼ勝負を決めた。
ストライドの大きな身長183センチ、体重93キロのランナーが、今季にかける思いを明かす。
「(日本)代表とかに呼ばれるくらいの選手になりたい。法大が強くならないと、上の人(セレクター)にも見てもらえない。流れを変えるプレーができたらと思います」
創部から94年で全国制覇3回の古豪はいま、変わろとしている。川越藏主将、長利完太副将、木村啓人クラブリーダー兼寮長が先頭に立つ複数リーダー制を設置。寮内の食事当番は最上級生がおこなうなど、大学選手権9連覇中の帝京大にも似た組織整備がなされている。
就任3年目の苑田右二ヘッドコーチは中井に防御の引き出しを与えるなど、フルタイムの指導者としてチームの戦術・戦略や個々のスキルを指導。一方で昨季着任の島津久志監督兼ゼネラルマネージャーは、週末のみ指導に携わる立場から現代型クラブへのモデルチェンジを目指している。
グラウンド外での取り組みは、さっそくグラウンド内のパフォーマンスに表れつつあるようだ。計8名置かれたグラウンドリーダーの1人でもある中井は、福岡・筑紫高から入学した頃を思い出しこう語る。
「僕らが下級生の時は4年生と話したことがないくらいのレベルだったんですけど、いまは学年関係なく皆でご飯に行ったりということがある。いい雰囲気になっていると思います。僕らが1年の時は正直、先輩が怖かった。だからサインを出す時もちょっと躊躇していたんです。だけどいまは、1年でもガツガツくる。2年の(FB)根塚洸雅も遠慮せずにどんどんくる。4年も負けてられんな、となっています」
必要以上の遠慮を無くし、15人がひとつの方向を見てプレーできるようになりつつあるという法大。2004年度以来のリーグ制覇を目指しており、24日は東京・上柚木公園陸上競技場で今季下部から昇格の専大を迎え撃つ。まずは上位陣とぶつかるシーズン中盤まで、ノンストップで勝ち続けたい。
(文:向 風見也)