ラグビー界の頂点に君臨し続けるニュージーランド代表、オールブラックスが負けた。しかもホームで。ワールドカップで2大会連続3回目の優勝を遂げた黒衣の最強軍団を、この3年間で倒したのは、アイルランド代表(2016年11月5日/USA・シカゴ)、ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ(2017年7月1日/NZ・ウェリントン)、オーストラリア代表(2017年10月21日/AUS・ブリスベン)の3チームだけだったが、過去の対戦成績57勝35敗3分(勝率62%)とオールブラックスが最も競ってきた宿敵、南アフリカ代表“スプリングボックス”が4チーム目となり、オールブラックスに久々の悔しさを味わわせた。
9月15日にウェリントンのウエストパック・スタジアムでおこなわれたラグビーチャンピオンシップ(南半球4か国対抗戦)の第4節。この試合に勝てば2節を残して大会3連覇を決める可能性もあったニュージーランド代表だが、36−34で南ア代表が死闘を制した。スプリングボックスがニュージーランドの地でオールブラックスを倒したのは9年ぶり。
この2チームは1年後に開幕するワールドカップ2019日本大会で、一緒のプールBに入ることが決まっている。今年、新体制となってすでに4敗を喫し、世界ランキングは7位まで下がった南アだが、ラシー・エラスマス新ヘッドコーチのラグビーがようやく浸透しだし、12年ぶりのワールドカップ制覇へ向け大きな自信をつけた。
序盤はニュージーランドのペースだった。前半5分、FBジョーディー・バレットが敵陣22メートルライン外から抜けて先制。16分にはHOコーディー・テイラーからクイックパスをもらった右WTBベン・スミスがタッチライン際を駆け上がり、インサイドでサポートについていたSHアーロン・スミスにつなぎ追加点を奪った。
しかし、南アは3連続トライで流れを変える。
20分、ラインアウトからの継続でWTBアピウェ・ディアンティが左外を抜けてゴールに持ち込み反撃開始。25分には相手FBジョーディー・バレットがクイックスローインしてバウンドしたボールをFBヴィリー・ルルーが確保してそのまま走り切り、逆転のコンバージョンにつながった。32分にはラインアウトからモールで前進し、持ち出したHOマルコム・マークスがインゴールに突っ込んだ。
ニュージーランドは38分、20フェイズ重ねた連続攻撃をWTBリーコ・イオアネがフィニッシュし、点差を詰めたが、南アはハーフタイム前にSOハンドレ・ポラードのPGで加点し、24−17で折り返した。
南アは後半早々、交代で入ったばかりのWTBチェスリン・コルビがインターセプトから約50メートル走り切り、リードを拡大。
52分(後半12分)に黒衣の11番をつけたイオアネが再びトライを奪い返したが、5分後にはグリーン&ゴールドジャージーの左WTBディアンティが鋭いステップからチームアタックをフィニッシュし、12点差とした。
追うニュージーランドは61分、ラインアウトからローリングモールで5点を入れる。しかし、SOボーデン・バレットのコンバージョンキックはポストに当たって外れ、7点差のまま終盤の戦いに突入した。
逃げ切りを図る南アにピンチが訪れたのは67分。攻めるニュージーランドに対し故意の反則をしたFBルルーがイエローカードを提示され、10分間の退出となった。14人でもしぶといディフエンスで耐えていた南アだが、74分、ニュージーランドが執念のドライビングモールでゴールに迫り、FLアーディー・サヴェアが力ずくでインゴールに押さえた。しかし、この日ゴールキック成功率40%だったボーデン・バレットはまたしてもコンバージョンキックをポストに当てて失敗し、南アが2点リードのまま時計は進む。
そして残り時間、ニュージーランドの猛攻を南アは自陣深くで耐え抜き、涙を流す者もいた、死闘の末のノーサイドとなった。
両チームは10月6日に再戦予定。舞台を南アに移し、プレトリアのロフタス・ヴァースフェルトで再び火花を散らす。