同志社高の定期戦で突破を図る白いジャージーの同志社香里高。
ボールを持つのはNO8文山永貴(撮影:南野真寛)
この定期戦で2トライを挙げたWTB奥隆太。(撮影:南野真寛)
13年ぶりに張り替えを行った同志社香里の人工芝グラウンド
4年ぶりの決勝進出、そして24年ぶりの花園出場へ舞台は整った。
同志社香里のグラウンドは、13年ぶりの人工芝張り替えが完了する。
9月9日、中高一貫を軸とする大阪の私学では、こけら落としの試合があった。
「みんなが集まってくれて、よろこんでくれて、よかったなあ、と思うよ」
緑の輝きを見て、ラグビー部監督の清鶴敏也はほおを緩ませる。
OBたちは京都との中間、寝屋川市にある学校に駆けつける。唯一の現役トップリーガー、神戸製鋼CTBの林真太郎もやって来た。
楕円球は人工芝の上を飛び交う。
午前11時、高校は京都の学校所在地から「岩倉」と呼ばれる同志社高と対戦。その後、中学は名古屋中、大阪ラグビースクールと、OBは岩倉との試合を楽しんだ。
2007年開始の定期戦も兼ねた高校戦は、26−12(前半12−12)で香里が勝利する。金色に光る「総長カップ」をHO杉山左門が受け取った。61人の部員(3年=19、2年=22、1年=20)をまとめる主将である。
岩倉には不利があった。エースのFB笠原浩史が、第2回TIDユースキャンプ(高校日本代表候補合宿)参加のために欠場する。
その状況で、香里はしっかりと勝ち切る。
今年から取り組む「前に出るディフェンス」が機能した。CTB佐田康太朗の好タックルを軸に、キックを中心にきっちりした戦法を取る岩倉を2トライに抑え込んだ。
「前に出ないと、食いこまれて相手のリズムになってしまいます」
杉山は新システムを使う理由を説明する。
先端の防御を落とし込んだ中心は川端正樹だ。OBコーチは昨年度までNTTドコモに所属。ポジションはCTBだった。
社会科教員でもある57歳の清鶴には、29歳の元トップリーガーに感謝がある。
「毎週末、来てくれる。ありがたい」
杉山は胸を張る。
「僕たちはOBさんのコーチに助けられています。得られる情報量も多いです。それが強みだと思います」
香里は岩倉とともに大学系列。ほぼ全員がエスカレータ式に入学する。上でプレーを続ける者も多い。
今年は香里OBが大学の中枢を担う。CTB山口修平は主将になり、WTBには186センチ、96キロとサイズが魅力の江金駿が入る。
大学のOB会組織「同志社ラグビークラブ」の会長であり、香里の卒業生でもある村口和夫はニッコリする。
「今年は香里と岩倉から6人ずつ、12人が部に入ってくれた」
山口や江金を含めた大学生もまた、川端同様、オフには臨時のコーチになる。
そのコーチングを受け止める体も出来上がりつつある。
グラウンド工事で、ラグビーができなかったこの2か月は、肉体改造に力点を置いた。
「ほぼ毎日ウエイトをしていました」
杉山はトレーナーに作成してもらったメニューを元にスクワットが170キロを突破。スクラムに不可欠な下半身の力が増す。175センチ、100キロの二の腕、胸筋の盛り上がりは、ボディービルダーのようだ。
香里の創部は1951年(昭和26)。今年68年目になる。全国大会出場は4回。最後となるのは1994年度の74回大会だ。部史上最高の4強に進出。準優勝する長崎北陽台に12−18で敗れた。
輩出した日本代表は5人。村口はWTBとして新日鉄釜石でキャップ2を獲得した。直近では1999年の第4回ワールドカップに出場した平尾剛史(現名=剛、現神戸親和女子大准教授)。主にFBとして神戸製鋼でキャップ11をつかんだ。
今年の香里の戦績は、2月の新人戦(近畿大会予選)では準優勝。4つあるブロック決勝で常翔学園に8−48で敗れる。
5月の春季大会(府総体)は5、6位決定戦で大産大附に35−59と敗北した。
この秋、98回目となる全国大会府予選は、Bシード3校のひとつとして迎える。
抽選で3つある地区割りの第2に入る。2つ勝てば、決勝でAシードの大阪朝高と対戦する公算が高い。
最後の決勝進出は4年前の94回大会。山口が最上級生の時で、東海大仰星に7−59と大差をつけられている。
村口は力関係を冷静に見据える。
「そりゃあ、出てほしい。でも、大阪は強いから、全国ベスト4くらいの力がいる」
夏合宿は長野・菅平。8月1日から2回計11日間行われ、練習試合では清鶴の母校でもある全国大会常連校の大分舞鶴に勝利した。
同じ夏、香里のダンス部は日本高校ダンス部選手権のビッグクラス(多人数部門)で2年連続6回目の全国優勝を果たした。
この日も、ラグビーグラウンドの南側にある校舎の下で、女子部員たちが音楽に合わせ、一心不乱に踊っていた。
24年前、男子校だった香里の部活動の中心にあったのはラグビー部だった。
杉山は決意を口にする。
「OBさんたちの意志を受け継ぎ、学校や保護者など応援して下さる人たちのためにも、花園に出たいです」
栄光を取り戻す戦いは11月4日(日)に始まる。対戦相手は予選リーグの北野、都島工、合同J(清水谷、緑風冠)の勝者。キックオフは午前10時。会場は新しくなったこのグラウンドである。
(文:鎮 勝也)