ハードタックルと覚えにくい名前の二刀流。
国内最高峰のトップリーグが今季のプロモーション用に作った『トップリーグの逆襲』でこう紹介されたのは、スコット・フグリストーラーだ。
動画ではコミカルな動きで笑いを誘っていたが、カメラの回らぬ公の場では誠実さがにじむ。
「日本は、いいレベルにあると思います。外の人間は『楽にできるだろう』と思うのでしょうが、実際にやってみたらフィジカルが激しいし、なにせスピードが速い。日本人は努力をするし、身体をしっかり当てられます。その意味では、僕のプレースタイルにも合っていますね。やりやすい」
身長183センチ、体重98キロというサイズは、トップレベルのFLにあっては大柄と言えない。それでも、今度の動画で紹介された強烈なタックルや肉弾戦でのプレーで存在感を示してきた。特に防御時の肉弾戦で相手ボールに絡みつけば、その足腰を地上から動かさない。球出しを遅らせる。
チームは2010年の初昇格以来、合計6シーズンのトップリーグ挑戦も最終順位は二桁。上位陣を倒すにはハードワークが必須とされるなか、来日3年目で共同主将を任されたフグリストーラーの価値は増すばかりだろう。
持ち前の泥臭いファイトについて、当の本人がこう胸を張る。
「それが僕の一番の仕事で、誇りにも思っている部分です。子どもにも、自信を持ってそう言えます。ずっと小さい、小さいと言われてきました。ただ自分では、サイズに関係なく痛みに強いと思っています」
母国のニュージーランドでは、2008年から4シーズン、ウェリントン代表として地域代表選手権に出場。12年にはスーパーラグビーのハイランダーズに加わった。このふたつのチームでは、現日本代表ヘッドコーチのジェイミー・ジョセフの指導を受けた。当時を思い返し、31歳の好漢は笑う。
「当時はあまり彼にリスペクトの気持ちを持っていなかったかもしれませんが、いまになってみればもっと(教えを)大事にしていればよかったと考えています。彼はスマートなコーチで、戦術や細部についてこだわる。若かったころの自分は、『ゲームプランなんてどうでもいい。身体を当てればいい』くらいに思ってしまっていたんだ! 年を重ねるごとに、いろんなことを学んできました」
2013年から4シーズンは、オーストラリアのレベルズの一員としてスーパーラグビーに参戦。母国よりも自分の強みを活かせそうだと感じたのが、国を移るきっかけだった。
確かにオーストラリアでは歴史的に、ジョージ・スミスやマイケル・フーパーなど公称で身長180センチ台の小さなFLが代表選手として活躍してきた。フグリストーラーが開拓を試みたのも、自然な流れだった。
「ニュージーランドでは、もっと大きくなってくれないと、とばかり言われていましたが、オーストラリアでは得意なことをやってくれればいいとだけ言われました。そう言われたことで、自信が持てました」
大型選手との身長差などを言い訳にしてこなかったファイターの動きは、日本列島のラグビーマンのシンパシーも得られそうだ。9月1日、東京・秩父宮ラグビー場。NECとの開幕節で背番号7をつけるゲーム主将の名は、覚えておくのが吉だろう。
(文:向 風見也)
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