国内最高峰ラグビートップリーグを通算5度も制している東芝は、今季、9年ぶりの優勝を狙う。
「優勝を狙うにあたりどこで差をつけるかといったら、スタートが肝心。序盤で勢いをつける」
開幕ダッシュを宣言するのは、主将就任2年目のリチャード・カフイだ。ニュージーランド代表17キャップを持つ33歳。身長189センチ、体重103キロのサイズで、勝負どころで強烈なタックルとラインブレイクを繰り出す。
なによりチームマンとしての資質が買われている。寮などで食事をとる時は若手同士の輪に入って積極的に日本語を使い、集団に溶け込んできた。来日6年目の今季も、そのパフォーマンスとリーダーシップに期待がかかる。
「東芝のよさはフィジカリティ。タイトエリア(接点周りでのぶつかり合い)で勝負できることです」
8月20日に都内でおこなわれたプレスカンファレンスで、伝統的な側面から「東芝らしさとは」との問いに応じる。確かに昨季からの瀬川智広監督体制下にあって、強靭なランナーが倒されずにボールをつなぐ「スタンディングラグビー」を唱える。カフイはその方針を全うしたいとする。
ただ一方で、「ラグビーは進化しています」とも話す。強みのフィジカリティを活かすためにも、愚直な戦いに固執したくないと言った。
「そこ(強み)にとらわれすぎず、ゲームのなかでスペースを攻めていきたいですし、キックも使っていきたい。そして適宜、タフさで勝負をする」
さらに、そもそもの「フィジカリティ」の定義についてこう言及する。
「ただガツガツ行くということと混乱して欲しくありません。私たちにとってのフィジカリティというのは、相手のウィークショルダー(タックルするのと逆側の肩)に対してアタックすることです。そして正確なブレイクダウン(ボール争奪局面)をおこなう。例えば、そのブレイクダウンに1人の選手を割いたら、その選手はしっかりと然るべき役割を果たす」
相手の「ウィークショルダー」や大きなスペースなど、効率的に前進できそうな箇所へランナーが突っ込む。その勢いを保ってブレイクダウンを作り、サポート役は確実に防御役を引きはがしたり、「スタンディングラグビー」という指針に沿ってオフロードパスをもらったりする。ボールを持つ人、それを支える人の判断やスキルを極めることも、東芝にとっての「フィジカリティ」「タイトエリアで勝負」の範疇に入るという。
この「フィジカリティ」で優位に立つ戦いを続けるには、「正しいエリア(敵陣)で戦う」とも宣言。8月31日、東京・秩父宮ラグビー場での初戦(対キヤノン)でSO、FBとして出る仲間の名前を挙げ、こう展望する。
「うちにはマイク・ハリス、コンラッド・バンワイクという2人の素晴らしいキッカーがいます。正しい位置でプレーするために、どう彼らを使うのかが肝になります」
カフイは防御時の肉弾戦でも決断力を求めたい。「去年はブレイクダウンでチャレンジしきれなかった部分がありました」とし、こう続ける。
「どんな状況でなら(接点上の)ボールを獲りに行くのか、行かないのか。防御網のラインスピードを上げていくのか、上げないのか。これが大事になります」
クラブの歴代外国人きっての好漢は、「チームとしてどうプレーしたいかという理解度については、よくなってきています」。オープニングゲームでも背番号13をつけ、持ち前のタフなプレーを繰り出す。
(文:向 風見也)
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