国内最高峰トップリーグで3連覇を目指すサントリーは、就任3年目の沢木敬介監督のもとで防御方法に鋭い出足の形を加えるなど、攻防システムの引き出しを増加。指揮官いわく、「(完成度は)70パーセントくらい。100パーセントになるのはファイナルの時。それまで(選手を)揺さぶります」。シーズンを通して、戦い方を洗練させてゆく。トップリーグのレギュレーション変更と相まって、定位置争いも激化しそうだ。
「戦い方のバリエーションが増えて、それがしっかりとチームに落とし込まれているなという感じがします。あとは、自分がこのチームにどうコミットしてゆくかです」
こう話すのは主将経験もある真壁伸弥。身長192センチ、体重119キロのLOで、昨季まで主力として突進役、モールの芯を全うしてきた。もっとも開幕前の練習試合では、途中出場組に回ることも多い。現代ラグビーにおいてはピンチヒッターの役割も重要だが、本人としてはもとの背番号5に収まりたいだろう。
今季のトップリーグでは、他国代表歴を持たない外国人を起用できる特別枠が拡大。最大同時出場可能数が昨年の「1」から「3」に広がる。サントリーでも、真壁のいるLOのポジションにニュージーランドのジョー・ウィーラー、オーストラリアのジョーダン・スマイラーの2人を並べるケースが増えつつある。
日本代表での定着を見据える31歳は、「春から(サントリーで)やってきた素晴らしい(外国人)選手がいる。そこ(定位置争い)が、今回の僕のチャレンジだと思っています」と前を向く。
「ランニングスキルでは彼らに劣っていますが、まずここで勝たないと代表にも残っていけない。まず、コンディションを作っていく。ただ、代表にいた頃よりは少しずつ走れるようになってきています」
真壁は日本代表関連の活動のため、7月中旬までチームを離れていた。もっとも6月のテストシリーズでの出番は3戦中1戦のみで、サンウルブズが挑んだスーパーラグビーでの出場機会も全16試合中1試合と限られた。
7月中旬にスーパーラグビーのレギュラーシーズンが終わると、休暇もそこそこにサントリーに合流。流大や松島幸太朗ら他の代表組よりも、随分と早く再始動したようだ。日本代表の薫田真広強化委員長によれば「(選手の休息の長さは)スーパーラグビーの出場数などによって個別に決めた」とのことだ。
今回の取り決めを、当の本人はあえて「愛」と表現する。サントリーを率いる沢木監督とのやりとりを思い返し、こう話した。
「僕は今季、サンウルブズや代表にあまりコミットできなかった。そういうところを考慮してもらって、休みなしになりました。逆に、そのほうが愛を感じますね。『代表に入らなくてはいけない。だったら休んでいる場合じゃないだろう』と、そういうことがしっかりとわかってくれている監督なので」
チームは9月1日、愛知・豊田スタジアムでトヨタ自動車との開幕戦をおこなう。球際でのパワーが売りの真壁も、通常よりも持久力が求められるとされるサントリーの戦い方に適応しつつある。他の代表組よりもスムーズに国内復帰した利を活かし、初戦から存在感をアピールしたい。
(文:向 風見也)
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