大学2年生にして国内トップリーグの強豪から注目される1人が、明治大の山沢京平である。
身長176センチ、体重84キロのFBは、タックラーにつかまれても簡単に倒れぬボディーバランスやロングキックを長所とする。身体の正面を防御に向けた鋭いパスを放れるのも魅力で、チームでは1年時から背番号15を与えられている。
7月21日、東京・リコー砧グラウンド。リコーと練習試合で14−54と敗れた直後、ヘッドコーチから昇格1年目の田中澄憲監督と話し込んでいた。
「ディフェンスの時の上がりのタイミングをいつも以上に早くしようと意識していました。うまくいっていたところと、まだ遅かったところがあった。もうちょい精度を上げていきたいと思いました」
味方防御のほつれをカバーしてタックルを放つ際、最後尾の立ち位置でただ待つのではなく相手との間合いを一気に詰めたいのだそうだ。この午後も「上がりを早く」のスタイルに挑戦し、その結果について指揮官のレビューを得ていたのだ。
田中監督は、積極的なミスなら歓迎するという。
「もともと彼はディフェンスで(その時の立ち位置で)待ってしまうタイプだったのですが、まず早く上がることにチャレンジして、そこで失敗した方がいいと思うんですよね。そうすれば『いまのは早すぎたな』『次はこうしてみようか』となるじゃないですか。チャレンジして、失敗して、学ぶことを探せという話をしました」
リコー戦時、山沢自身が最も反省していたのは得意のランについてだった。
というのも相手は、トップリーグのなかでも献身的な防御に定評があるチームであった。リコーのタックルの強度、タックルを決めた選手の素早い起き上がりを前に、学生ラグビー界屈指の推進力を誇る明大もなかなか前進しきれない。自ずとひとつの接点に相手より多くの人数を割くこととなり、山沢がグラウンドの右中間、左中間でボールをもらう頃には、その目の前にリコー防御の分厚い壁が敷かれていた。スペースを切り裂くタイプの山沢にとってはプラスアルファの工夫が必要そうだった。
このような現状を自覚してか、山沢はこう言ったのだった。
「うちのアタックが前に出られなくて、枚数を削られていて、相手は揃っていて、という状況。そういう時でも自分が(もともと立っていた場所で)待ってパスをもらってしまうところがあった。もう1歩くらい深くして(相手と間合いを取って)走り込んでもらえればもっといいな、と思いました。このこと、結構、前からも思っていたんですけど」
きっとこの先、日本を背負って世界と対峙するとしても、似たシチュエーションに直面するだろう。来るべき時に然るべき突破を決めるべく、山沢は自分の活きやすい立ち位置などを模索している。
この夏は防御での飛び出しと攻撃中のポジショニングを磨くのに加え、臀部(でんぶ)の力を使った走り方の体得や体幹強化トレーニングにも注力する。「スキルもまだまだ足りないし、キック、パス、ラン、ディフェンス。これからもっと、積み上げないといけない」。チームの勝利を目指すと同時に、世界的選手になるためのトライアル・アンド・エラーも重ねる。
(文:向 風見也)