フランスにプレッシャーをかける中村知春主将。(撮影/松本かおり)
ブラジル戦で後半に2トライを挙げた平野優芽。(撮影/松本かおり)
フランスとの地力の差は大きいままだった。
しかし、負けて目標の8強への道が途絶えてもうなだれず、次戦の相手、ブラジルに競り勝った。
7月20日にアメリカ、サンフランシスコで開幕したラグビーワールドカップ・セブンズ。一発勝負のトーナメントで優勝が争われる方式の初戦で強豪・フランスと対戦した女子セブンズ日本代表は、7-33で完敗して8位以下を決めるチャレンジトーナメントへ。その初戦のブラジル戦では19-14と接戦を制した。
「先手必勝」をキーワードにした今大会。しかしフランスに先手を取られた。
浅めに蹴り込んだキックオフボールを獲得し攻め、勢いをつけたかったが失敗。相手に確保され、アタックを継続される。1分過ぎにインゴールへ入られ、主導権を握られた。
パワー、スピード、スキルで上回るフランスに、ボールを持たれ続けた。4分20秒、6分とトライを許し、ほとんど攻められず。前半終了間際、大竹風美子が左サイドを走り切ったのが唯一の得点となった。
「(相手ボールキャリアー)ひとりに対して2人、3人と寄ってしまい、外を余らせてしまった。そうさせないために攻撃時間を長くしようと話しましたが、それができなかった。用意してきたことを出す前に圧力を受けてしまいました」(稲田仁ヘッドコーチ)
負けるパターンは、いつも同じ。大舞台での初戦に焦点を絞って準備してきたけれど、今回も差は詰められなかった。
しかし、上位進出の夢は破れても落ち込まなかった。次戦のチャレンジトーナメント(9位〜16位)初戦で、サクラセブンズはブラジルに競り勝った。
大竹風美子が先制トライを奪った前半は7-7。後半最初のキックオフボールを受けたイサドラ・セルロに60メートル以上を走られて勝ちトライを奪われたときには嫌な空気が流れた。
それでも崩れなかった。
平野優芽が言う。1分47秒に追撃のトライ(12-14)、5分27秒に逆転トライ(17-14→コンバージョンキックも決まり19-14)を挙げた殊勲者だ。
「(慌てることなく)やってきたことをやろう、と。実際に私のトライも、オフロードパスをつないでボールを動かして奪えた。最後に自分が決めただけ」
稲田ヘッドコーチは、「こういう大舞台で、接戦を勝ち切ったのは選手たちの成長だと思います」と話した。
負けた試合と勝った試合。その違いを中村知春主将はこう分析した。
「フランスはハイプレッシャーを掛けてくるので、どうしてもそれに押されてやりたいことがやらせてもらえない。ブラジルは(防御で前に)出てこないので、私たちのプレーができた」
以前から分かっていることをなかなか克服できない。
そんな中でも、チームの色はできつつある。
2トライを奪った大竹は、「試合中も(私に)外に行って、とみんなが声をかけてくれる」と言った。
スピードとパワーのあるこの人にアウトサイドで好球を渡そう。その意思統一があるだけでも、チームには芯が通る。
強味をひとつでも増やすことが、世界上位から受ける圧力を分散させることになる。
2日目(7月21日)の初戦、チャレンジトーナメント準決勝の相手はフィジー。残り2試合に勝って、8位に少しでも近づきたい。