早稲田実業の相良昌彦。写真は5月の東京都高校春季大会・準々決勝時(撮影:見明亨徳)
息子の試合を観戦する父、早大の相良南海夫監督(中央/撮影:見明亨徳)
今年の2月頃だったか。東京の早稲田実業高ラグビー部3年(当時は2年)の相良昌彦は、「俺、監督になるから」の言葉に驚いた。
三菱重工相模原に務める父が、急遽、早大ラグビー部の監督に就任するという。父の相良南海夫が創部100周年を迎える伝統校の指揮官となることは、まもなくスポーツ紙などでも報じられた。
身長179センチ、体重93キロの相良は、三菱重工相模原の元監督でもある南海夫を父に持つ。楕円球に親しい家庭で育ったので、父もプレーした早大の系列校でラグビーをするのは自然な流れだったかもしれない。
それまでしていたサッカーを辞めて八王子ラグビースクールに入ったのは、神奈川・相模原市から東京・八王子市に引っ越した小学2年の頃だ。推薦で早稲田実業高に加わると、突破力のあるNO8として存在感を発揮。今年は高校日本代表候補の第1次メンバーに名を連ねた。身体能力のみに頼らぬランプレーについては、自らこう解説する。
「ギャップを見つけて、そこへ走ってゆく。まずラインブレイクすることを意識します。(その後、カバー役との)1対1になれば抜けるので」
高校卒業後は、系列の早大で競技を続けようと思っている。近親者が指揮官となりそうな状況もどうにか受け入れ、「ワークレート(仕事量)の高い選手になりたい。味方が抜けたのをフォローして、それをラインブレイクにつなげたい」と理想の選手像を描く。進学希望が叶えば、名脇役が入るFLへのコンバートも検討する。サイズを鑑みてのことだ。置かれた立場を客観視できる強みは、大学ラグビー界にあっても活かされそうだ。
6月10日、栃木・佐野市運動公園陸上競技場。相良は早稲田実高の背番号8をつけ、関東高校大会Eブロック決勝に先発。関東学院六浦高の勢いに押されて12−27と敗れたが、収穫と課題を丁寧に分析する。
結果にただ悲観するだけでなく、「チームでは意思統一することが一番、大事だと考えています」と強調するのだ。
「意思統一がされていないと(それぞれの動きが)ばらばらになってしまう。きょうはその意思統一のために2つのテーマを決めていました。そのうちのひとつ、ディフェンスでの『圧力』はできていなかったですが、もうひとつ決めていたアタックの『サポート』で(自軍ボールの)継続ができたと思います。ターンオーバーも、あまりされなかった」
まずは、全国高校ラグビー大会出場へ力を注ぐ。
(文:向 風見也)