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10連覇目指す帝京大の岡本慎太郎、スクラムに「闘争心」を燃やすわけ。

2018.07.06

5月13日の大東文化大戦でスクラムを組む帝京大の左PR岡本慎太郎(撮影:松本かおり)

 大学選手権10連覇を目指す帝京大で「PR全員の闘争心を引き出したい」と話すのが、4年生の岡本慎太郎だ。
 今季の公式記録で身長180センチ、体重110キロとサイズにも恵まれ、フィールドプレーで存在感を発揮する。今季は左PRのレギュラーを担う最上級生として、グラウンド内外でチームを支えたい。
「自分のことに精一杯になってしまう性格ですが、周りにアプローチできる先輩になりたいです」
 帝京大入りを決めたのは、出身の京都成章高で湯浅泰正監督に勧められたからだ。「自分も日本一の大学に行けるのならばと思い、入りました」。いざ加われば、自身が思う大学の運動部のイメージを覆された。寮内の雑用を担う上級生に感銘を受け、いまは自分が後輩に手本を示したいという。
「先輩方は怖いんだろうと覚悟をしていましたが、それは間違っていて。余裕のなかった1年生の頃、4年生に助けていただいたりしました」
 高校時代は2列目にあたるLOとして突進力を活かしてきたが、大学入学後は最前列のPRへ転向した。ここで難儀したのは、スクラムだった。味方の重さを相手に伝える重責に、「初めてのことでにっちもさっちもいかない」。正確なフォームを身体に落とし込むのに「2年、かかりました」という。
 ようやく壁を乗り越えて迎えた格好だが、今年の4月30日、厳しい現実を突きつけられる。北海道・札幌ドームでの関東大学春季大会Aグループ初戦で、明大に要所で押された。試合も14−17で屈し、「(課題を)おろそかにしてはいけない」とうなだれた。
 失意の敗戦を受け、岡本は基本事項を再点検した。組み合う前の立ち位置、姿勢、組み合う瞬間の体勢…。「やらなきゃいけないことをひとつひとつ、こだわってやっています」。何より意識したのは、スクラムそのものへの苦手意識をなくすことだった。
 経験不足を自覚する謙虚さは、練習効率こそ高めうるが真剣勝負では足かせとなりうる。岡本も試合に出る以上は、自分を強者だと信じて組む。
「僕自身、スクラムで弱気になっていた時期があるのですが、どうせやるなら自分から闘争心を出していこうと心掛けています」
 春季大会の2戦目以降では、何度も自身の側からスクラムを押し込んだ。特に5月20日は、東京・帝京大百草グラウンドで八面六臂の活躍。東海大を69−7で制し、チーム選定のMVPにも輝いた。結局、春季大会は4勝1敗で終え、LOの秋山大地主将からこう言われるようになった。
「岡本には、すごいファイティングスピリッツがあります。スクラムを組むたびに毎回、『押そうぜ』と声をかけてくれる。ボールを持った時も、スクラムの時も、前に出ようという気持ちを前面に出してくれます」
 秋の関東大学対抗戦A、冬の全国大学選手権に向け、「甘い部分を消していけるような夏にしていきたいです。練習の質を自分たちで上げていく」と岡本。トレーニングは謙虚に励み、試合には自信満々で臨みたい。
(文:向 風見也)

力強いボールキャリアーでもある岡本慎太郎(撮影:松本かおり)
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