大会MVPとなったPEARLSのジャンナ・ヴォーガン。(撮影/松本かおり)
地域に根ざした活動を続けるPEARLS。(撮影/松本かおり)
ひとつになろうよ。
ここ一番の時にうたうチームソングが、あきぎんスタジアムに響いた。
5月26日、27日におこなわれた太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ2018・第2戦 秋田大会の頂上決戦で戦ったのはPEARLS(三重)と日体大ラグビー部女子。17-14の接戦を制したのは前者だった。
カップ準々決勝では延長戦の末に、ながとブルーエンジェルスに31-26で勝った。
準決勝のYOKOHAMA TKM戦は最後の最後に21-20とひっくり返した。
大会2日目はラクに勝てる試合がひとつもなかった日体大。それが響き、徐々に体力を奪われたか。
4月29日、30日に秩父宮で今季第1戦・東京大会を制したのに続いて2大会連続優勝の意欲にあふれていたけれど、最後まで3点差を詰め切れなかった。
ファイナルで笑ったPEARLSは、昨年11月に招待枠で出場した富士山裾野御殿場大会で優勝したときに続いての2度目の頂点だった。2日間、安定感抜群のパフォーマンスを発揮して大きな結果を手にした。
大会のフィナーレを飾る試合では、キックオフレシーブからノーホイッスルトライを奪う集中力を見せた。ジョージア・ダールズがスピード豊かにアウトサイドを攻略して先制点を奪った。
「ボールを大きく動かす中で生まれたギャップを逃さず攻め切る」(記虎敏和監督)
自分たちのスタイルを実行する滑り出しだった。
PEARLSは最後までぶれなかった。2分50秒頃に日体大にトライを許して同点に追いつかれたものの慌てず、5分過ぎには勝ち越した。
フェーズを重ねて前進する途中に相手の反則を誘うと、シンビンで6人となった防御の乱れを見逃さない。保井沙予が左中間に飛び込んでハーフタイムをリードして迎えた(12-7)。後半3分にもジャンナ・ヴォーガンがインゴールに入り、差を17-7と広げた。
残り1分のところでスコアが17-14となったときには、今大会で何度も見られた「逆転のニッタイ」を思い浮かべたファンは少なくなかっただろう。
しかし先手、先手をとっていた側は落ち着いていた。
最後のシーンは、相手が蹴ったリスタートのキックオフボールを受けた後にPKを得る。PKをタッチに蹴り出して王座に座った。
今季からチームの先頭に立つ齊藤聖奈主将は、「練習を重ねてきた分、秩父宮での大会時よりチーム力が高まっていた。それが勝利の要因だと思います」と喜んだ。
「自分がキャプテンになった最初の大会では5位でした。そこから這い上がれてよかった」
チームワークの良さを問われると、少し照れて言った。
「日本人、外国人関係なく仲がいい。その点ではうちが一番だと思います」
原仁以奈の証言は興味深かった。
「本当に家族のようなチームです。だから、互いのことをよく知っている。だから、誰がどう走るとか、どこにいるかとか分かる」
それが正確なプレーを呼んでいると言った。
記虎監督は「以前と比べてミスが少なくなった。それが試合の安定感に結びついていたし、安心して見ていられました」。
「私たちは、ラグビーがそんなに盛んでない(三重という)場所で地域の方々に応援してもらいながらプレーしています。その方々に勝利で恩返ししたいと常々考えてきた。それを実現できて本当によかった」
10月に予定されている今季第4戦は、地元・鈴鹿での開催が予定されている。そこでまた笑うための予行演習は、遠く秋田でうまくいった。