大学選手権10連覇を狙う帝京大の背番号3はいま、淺岡俊亮がまとっている。
京都成章高出身の4年生で、身長186センチ、体重125キロの巨躯である。有望新人の加入にも、泰然自若としている。
「もう、帝京大では(約)4年間もやってきたので…」
5月20日、東京・帝京大学百草グラウンド。関東大学春季大会・Aグループの3戦目に先発し、一昨季まで2季連続全国2位の東海大と激突する。
相手が主力を怪我などで欠くなか、右PRの淺岡はスクラムで光る。FWが8対8で組み合う攻防の起点だ。最前列に入った淺岡は、左PRで同級生の岡本慎太郎とともにつばぜり合いを制する。
特に淺岡の位置からのプッシュが多く、それが69−7での快勝劇を支えた。殊勲の「3」が、静かに振り返る。
「1、3番(両PR)が前に出ることで強いスクラムが組める。岡本と自分で前に出て、(FWの)8人が固まって押そうとしています」
選手層の厚いクラブにあって、この春から先発に定着する。早速、教訓を得た。
4月30日に北海道・札幌ドームであった春季大会初戦で、前年度の大学選手権決勝で制した明大と激突。ここで淺岡は、見せ場のはずのスクラムで苦しんだ。
スクラムでは、1人の姿勢が変わるだけで全体の優劣が変わることもある。この日の淺岡は、最初に相手とつかみ合う段でかすかに揺さぶられた。互いに肩を差し込み合った時点で、向こうに有利な体勢を取られた。そのまま気圧される。14−17で敗れた。
スクラム練習に時間を割く相手に勉強させられた格好だが、ここで淺岡は変化のきっかけをつかんだ。いかなる状態でも「自分の(相手との)間合い」を保てるよう、実際にスクラムを組み合う前の動作を再確認。東海大戦では、その微修正が奏功したようだ。
「まだまだ、弱いんで。秋に向けて一人ひとり成長している段階です」
入学時からチャンピオンであり続けたクラブでは、主力組入りの前から心技体を磨いてきた。その過程で得たのが「受け入れる」心。失敗から財産を見つける資質のことで、それは今度のスクラム改善につながっただろう。淺岡は、過去と現在との変化をこう分析する。
「以前は何かを言われたら、言い返していた。自分が合っているのか間違っているのかも知らない状態で、自分が正当だと考えを押し付けていました。いまは、他人の意見を受け入れて、反省して、次に活かす…と」
今季、帝京大の右PRには希望の星が加わった。桐蔭学園高出身の細木康太郎だ。冬の全国高校ラグビー大会で持ち前の突進力をアピールした細木は、高校日本代表にも名を連ねて大学でも将来が嘱望される。
淺岡にとっては、やっとレギュラーになったかと思えばクラブのホープと定位置を争うという状況下だ。
しかし、当の本人は動じない。
「負けられないですね。(負けない自信も)ありますね。考え方、気持ちの強さ、粘り…。こういう場(帝京大)にいさせていただいて、身体以外でも成長した部分も多いので…」
下級生への愛情を前提とし、矜持を覗かせた。
(文:向 風見也)