今年5月、女子セブンズ日本代表候補の合宿を視察する男女7人制日本代表総監督の岩渕健輔氏。
6月1日からは男子セブンズ日本代表ヘッドコーチも兼任する(撮影:松本かおり)
日本ラグビー協会(日本協会)は5月21日、男子7人制日本代表の岩渕健輔・新ヘッドコーチ(HC)就任を発表。ダミアン・カラウナ前ヘッドコーチは5月いっぱいで契約満了となり、岩渕新HCはそれまで務めていた男女7人制日本代表総監督と兼務する形で2020年のオリンピック東京大会を見据える。
この日都内で会見した岩渕新HCは、「このタイミングでこういう職務に就くことがどれくらい大事かは、十分に認識しております」。2015年までの4年間は日本代表のゼネラルマネージャーとして、15人制のワールドカップイングランド大会で3勝するエディー・ジョーンズを後方支援。日本ラグビー界で希少な国際派が、今度は現場に立つ。
「オリンピックまで800日少しの間(次第)で、その先の日本ラグビーが大きく変わってしまう。そういう重要な時にこの職に就くのは、大きな責任があると考えています。私はいままで強化の現場で大きな仕事をさせていただきましたが、ここで先頭に立って、選手と一緒に大きな成果を挙げていきたい、覚悟をもって取り組んでいきたいと思っています」
現在務めている男女7人制日本代表総監督としては2016年、オリンピックリオデジャネイロ大会で4位入賞した瀬川智広元HCからカラウナ前HCへスイッチした。
ニュージーランド出身のカラウナへは世界基準の涵養(かんよう)へ大きな期待がかかった。しかし各企業や大学クラブが15人制に注力するなか、経験者の確保に難儀した。
日本協会は7人制の代表活動に専念できる専任契約の制度を発足させたが、坂本典幸専務理事いわく「オリンピック種目となって状況、注目度が変わったなか、いろいろな選手と会って話しました。しかし、自国開催のワールドカップにどうしても話がいき、『両方はどうしてもできません』と…」。オリンピックの前年にあたる2019年には15人制のワールドカップ日本大会があるため、「思っていた選手との専属契約ができなかった」と説明する。
岩渕も強化委員長として、日本を離れる機会の多いカラウナへ「彼がいない時も含めて試合映像をチェックして、逐一ビデオを送った」と候補選手の情報共有に注力。しかし2017年、世界サーキットのワールドセブンズシリーズで、常時出場可能なコアチームからの降格を余儀なくされた。今年4月には再昇格を決めたが、今回の結論に至った。
低迷の背景には、海外出身の指導者がコントロールできぬ問題もあったのは明らか。そのため会見では、HC交代だけで流れを変えられるのかといった趣旨の質問が続いた。
カラウナ前HCを支える立場だった岩渕新HCは「(カラウナ前HCへの評価は)昨年来から、大きな大会ごとにレビューをしてまいりました」とし、こう続けた。
「専務理事には就任前、私自身にも支えきれなかった責任があるという話をさせていただきました。そのなかでも協会からこの話(新HC就任のオファー)をいただいたので、大きな責任を持ってやるべきだと思って決断をしました」
坂本専務理事は、「結果的には(カラウナ前HCを)サポートできなかったということになると思いますが、もともと日本の状況を大きく変えられる状態ではなかった」。チームの国内で置かれた状況が変わらないなか、チームの世界における立ち位置をどう変えてゆくか。
岩渕新HCは「あと2年で7人制の魅力、価値を選手と多く発信して、そこで戦いたいと思う選手に1人でも多く来てもらいたいと思っています」と宣言する。
「そのためには、東京でメダルを獲る目標だけではなく、なぜナショナルチームの一員として戦うのかというフィロソフィーを持って、そこに賛同してくれる選手と一緒に戦っていきたいと思っています」
7月には、サンフランシスコで7人制のワールドカップが開催される。
(文:向 風見也)