ラグビーリパブリック

サンウルブズ初勝利の背景。日本代表強化へはどうつなげる?

2018.05.13

レッズのジョージ・スミスらを振り切ろうとする福岡堅樹(撮影:松本かおり)

<スーパーラグビー2018 第13節>
サンウルブズ 63−28 レッズ
(5月12日/東京・秩父宮ラグビー場)
 勝った側の殊勲者が当日のレフリングに関し「ブレイクダウン(接点)をきっちり見る。こっちにプラスになることも多かったので良かった」とする一方、敗れたブラッド・ソーン ヘッドコーチ(HC)は「規律は目指しているものには程遠いものでした。理由は精神面が多く占める」。2週間前に2季連続準優勝のライオンズに勝って4勝5敗としていただけに、敗軍の将はこうも続ける。
「ライオンズ戦時の姿勢が良かった分、それを持続できなかったことにフラストレーションを感じます」
 反則数は、開幕9連敗中だったサンウルブズが「7」で4勝5敗のレッズが「12」。特に先発中9人が25歳以下と若いレッズは序盤に笛を鳴らすなど乱れたことで、サンウルブズはやや余裕を得たか。
 ハイライトは前半22分以降。サンウルブズは自軍のミスや反則を契機に9−14とリードされていたが、次のキックオフ直後の肉弾戦周りでLOグラント・ハッティングがキックチャージを決める。球を跳ね返す。
 身長201センチの殊勲者が「背が高いから状況は見えた」と笑うプレーを起点に、サンウルブズ防御網が飛び出す。互いにミスを重ねた末、サンウルブズはレッズにキックをさせてハーフ線付近右で攻撃権を得た。
 この日は全般的に組織防御が安定。WTB福岡堅樹は、飛び出す際の判断や声掛けに気を使っていた。
「勢いを与えさせないために前に出て(タックラーが)2枚で入ることを意識。スペースを与えないために(接点の左右に並ぶ)人数をコントロールしました」
 サンウルブズは続く25分、タックルされながらも球をつなぎ左、中央のスペースを侵略する。
 28分、PRクレイグ・ミラーの突破が決まった22メートル線付近の接点で、レッズは反則を犯した。サンウルブズはSOヘイデン・パーカーのペナルティゴールで12−14と迫る。 
 そして30、33分には定評ある計画的な攻めで加点。防御の位置取りを乱すレッズを前に数的優位を作り続け、ハーフタイム直前のペナルティゴールも交え29−14と勝負を決めた。
 後半はWTBホセア・サウマキが防御連携でピンチを作りながらも持ち前の突破力で14、38、41分とインゴールを割る。
 レッズのソーンHCは「こちらは積み上げている段階。きょうは基本スキルがおぼつかなかった」。両軍の対戦結果としてのサンウルブズ初白星を、HO堀江翔太はこう捉えた。
「きょうだけはほっとして、来週は次の試合に向けて準備。これで『できた』とは思いたくないので」
 サンウルブズには日本代表の強化という、勝敗とは別な大義がある。この日は6月の代表活動には参加できない海外出身選手が活躍したが、ファンの喜ぶ初勝利をどうナショナルチームの力に転化させるか。
 かような趣旨の質問には、WTB福岡は自信とユーモアをにじませる。
「6月はメンバーが変わりますが、しっかりとコミュニケーションを取る。日本語も使いやすくなるので」
 同種の問いに、HO堀江は「いいところを伸ばし、悪いとこは修正する」。淡々としていた。
 現場の感激ぶりが必要最低限だったことが、一番の価値だったか。
(文:向 風見也)
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