ラグビーリパブリック

マッケンジー&徳永コーチの声響く。サクラセブンズ、一丸となり浮上を。

2018.05.02
サクラセブンズはブレイクダウンを2人で制し、攻撃を継続したい。(撮影/松本かおり)

カナダ人も、NZでの指導経験が長いレズリー・マッケンジー コーチ。(撮影/松本かおり)

ユース時代から選手たちを知る徳永剛コーチ。(撮影/松本かおり)
 熊谷ラグビー場のCグラウンドに、甲高く、大きな声が響き渡っていた。
「モット、ハゲーシク! モット、モット、ハヤーク」
 レズリー・マッケンジー コーチだ。
 5月12日に始まるHSBCワールドラグビー女子セブンズシリーズ 2017-2018第4戦・カナダ大会(ラングフォード)へ向けたサクラセブンズ(女子セブンズ日本代表)の準備が5月1日から始まった。
 今回の合宿に参加した選手たちは、前日までおこなわれた太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ2018 第1戦・東京大会に出場した者たちも含めた13名。初日は午後3時30分から2時間近く動き続けた。
 これまでもスポットコーチとして何度か同チームの指導にあたってきたマッケンジー コーチは、今合宿から正式にコーチに就任した。すでに熊谷市内に居を構え、2020年の東京オリンピックへ向け、稲田仁ヘッドコーチをサポートしていく。
 サクラセブンズは、4月21日、22日におこなわれたワールドシリーズの北九州大会ではブレイクダウンで圧力を受け、用意していたアタックをなかなか実現できなかった。新任コーチは、その部分を主に担当する。
「日本の選手たちはハードトレーニングに対する姿勢がとてもいい。継続していけばきっと進化していける」
 その一方で、試合の中で起きる不測の状況への対応力を課題に挙げ、練習にもそういった状況を増やしていきたいと話した。稲田ヘッドコーチも、「僕ができないこともできる。また、くり返し言ってきたことでも、彼女が言うとこれまでと違う感覚で響くこともあると思います。力を合わせてやっていきたい」と期待を寄せる。
 マッケンジー コーチは、女子カナダ代表として活躍した37歳。コーチングの世界に身を転じた後、豊富な経験を積んできた。
 母国のブリティッシュ・コロンビア大女子チーム ヘッドコーチが本格的なコーチングキャリアのスタート。現職に就く前はNZ・ワンガヌイ協会のディベロップメントオフィサーを3年間務め、その前の3年はウェリントン協会でディベロップメントコーディネーターに力を注いだ。
 女子だけでなく男子(ハリケーンズやワンガヌイ代表のユース世代)も指導したことがある。岩渕健輔男女セブンズ総監督のアンテナに引っかかり、日本との縁ができた。
 中村知春主将は同コーチについて、「スイッチの入れ方が上手」と話した。この日のセッションでも厳しさを打ち出すシーンと気持ちをつかむ声の出し方が絶妙で、チーム全員を熱くさせていた。
 この合宿には、もうひとり練習を活気づける存在が加わっていた。
 徳永剛コーチだ。こちらもこの合宿からコーチに就任。熊谷の住人になった。マッケンジー コーチ同様、五輪へ向けてチームを後押しする。
 同コーチは2012年女子セブンズユースアカデミーのコーチを務めたのを皮切りに、男女の若き才能の指導にあたってきた。現在のサクラセブンズの選手たちのことも中学時代から知り、性格や特徴もよく分かっている。
 福岡出身で、福岡市立長丘中、大分舞鶴高、福大(同大学院卒)で活躍し、サニックス(現・宗像サニックス)、玄海タンガロア(クラブ)でもプレー(ポジションはSH)を続けた。
 2010年から6年間は福岡市立福岡西陵高校の教諭として同ラグビー部の監督を務め、2016年からは交流人事で県立香椎工で保健体育を教えつつ、同校ラグビー部のコーチも。福岡市からの派遣という形で現職に就いた。
 本人が「初心者もいる高校生を教えてきた経験があるのでマイクロスキルのコーチングなどでチームに貢献していきたいですね」と言うように、サクラセブンズでもプレーの精度を高める部門を担当することになりそうだ。岩渕総監督も「分析の力もあるし、細かな部分をより高めてほしい」と話す。
 北九州大会でのパフォーマンスを振り返り、チームは、闘う意志をもっと剥き出しにしようと確認し合った。気持ちを切り替えてカナダ大会に臨み、なんとか上位へ浮上したい。
 そのためのキーワードは、攻撃時は「フロントフットアタック」だ。レシーバーが走り込みやすい場所に正確にパスを放ることで、強いボールキャリーが実現。それがサクラセブンズの生命線であるハーフブレイクと2人での球出しを可能にし、練習してきた攻撃を継続できると考える。
 中村主将は北九州大会での戦いを経て「課題があり過ぎて呆然とした」と苦笑したが、「急には強くなれない。マインドセットを変えて、一歩ずつでも前進し続ける」と気丈に話す。
 指をくわえて、当たり前のようにコアチームから陥落するのは嫌だ。
 コーチ陣、選手たちは一丸となって、目の前の1勝をつかみとる準備を続ける。
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