新しい土地に移り住んで新しいチームに入って、最初の戦いを終えた。高校時代から15人制、7人制の日本代表に選ばれてきた冨田真紀子は、「世界と戦うマインドでやらないといけない」と再認識した。
女子7人制ラグビーの国内サーキットである太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ(WS)の東京大会が4月29、30日、東京・秩父宮ラグビー場であった。12チーム中8位で戦い終えた初参加のながとブルーエンジェルスにあって、冨田は「世界と…」の詳細をこう続けた。
「もちろん、そう思ってやっていたつもりですが、もしかしたら自分を甘やかしていたかもしれない。パス、キャッチ、タックルという基礎を忠実にできるようになってからフィールドに立たないといけないと思いました」
初日の第1試合では、のちに優勝する日体大と22−22でドロー。3試合あった予選プールは1勝1敗1分とするも、順位決定トーナメントがあった2日目は3戦全敗に終わった。試合を通じ、肉弾戦で攻守逆転を許すシーンやパスやタックルのエラーが気になったのだろう。
チームを率いるのは母国ニュージーランドで指導歴が豊富なエドウィン・コッカーだ。選手を飽きさせない練習設計で評価を集めるが、冨田は「私たちのレベルがエドのコーチングが活きるまでに行っていないので、原点に返ることが大事だなと思います」。選手に基礎スキルが備わっていることを前提としがちな強豪国トップコーチの傾向を踏まえ、「それ(基本技術)が、日本人のなかでは劣っていると思う」と課題を挙げる。
文字にすればクールな言葉だが、声色は決して暗くない。充実感の表れでもあろう。地元企業からの支援を受け町おこしの役割も担っているチームにあって、冨田は言う。
「本当に応援してもらっていると心から感じます。見ていてわくわくするようなゲームをしたい」
昨季までは世田谷レディースに在籍。しかし昨秋の太陽生命WS入替戦へは、できたばかりだったながとブルーエンジェルスのスポット参加選手として出場した。
2016年のリオデジャネイロオリンピック(7人制)、2017年の女子ワールドカップ(15人制)アイルランド大会などを経て、今後の選手生活を充実させるには自己改革が必要だと感じたか。
このクラブに本気で腰を据えようと思ったのは、件の入替戦で高校生の石見智翠館高に10−12で敗れたからだ。勤務先のフジテレビからサポートを受け、新天地のある山口県長門市へ移住。「環境、関わる人も変わりました。自分のなかでたくさんの変化がある」。休日に遊ぶ友人もいない場所で「新たなコネクションを作れるような人になりたい」。普段の暮らしに刺激を与えることで、競技生活にも張りを持たせている。
入替戦で黒星を喫しながら初参戦が叶った今年の太陽生命WS。試合中のエラーから基本スキルの未熟さを痛感したという冨田だが、これから真に取り組みたいのは、「心のすり合わせ」とのことだ。大会中に見られた連携の乱れを正すには、地域に定住する日本人選手と合流間もない外国人選手との深いレベルでの意思統一が必要だという。
「アタック、ディフェンスでも、不安な状態で次のプレーに臨んでいたことが多くあったので。外国人も変わらなきゃいけないし、日本人も彼女たちに寄り添っていかないといけない。お互いがお互いを思いやる気持ちが必要だな、と。チームには代表選手も少ないし、久しぶりにラグビーをするという選手もいて、始まって間もない。『(問題があっても)言っていいのかな』というちょっとした遠慮のようなものも、私のなかではあった。チームを信頼するまでには至ってなかったなと、今日の結果を通じで再認識しました。(これからは)自分たちがなぜこのチームに来たのか、何を目指しているのかとか、(目標設定について)心をすり合わせることが大事だと思います」
生まれ育った大都会とは異なる環境のもと、多国籍の仲間とゼロからいいチームを作りたい。5月26、27日の秋田大会を前に、いい宿題をもらった。
(文:向 風見也)