攻守に高い順応力を見せた小山大輝。写真はアルゼンチン戦。(撮影/松本かおり)
細かなアングルチェンジの連続や群がるような防御に、このチームの良さが出た。
4月28日から始まっていたHSBC ワールドラグビー セブンズシリーズ 第8戦シンガポール大会。男子セブンズ日本代表は、初日におこなわれたプール戦でロシアに勝っただけのA組3位となり、2日目(最終日/29日)はチャレンジトロフィー(9位以下トーナメント)を舞台に戦った。
同トーナメントの初戦はウエールズに19-28。粘るも敗れた。
若手、ニューフェイスのいるチームはここから踏ん張った。
フランスを29-14と破ると、アルゼンチンにも31-24。招待枠での出場ながら(16チーム中)13位となった。
ウエールズ戦は惜しかった。
PKから速攻を仕掛け、小山大輝、坂井克行のコンビネーションでの突破をきっかけに中野将宏が先制トライを奪う立ち上がり。前半を12-7とリードした。
しかし後半に差を見せつけられた。奪われたトライはすべて、スピードで振り切られた。
19-21で迎えた終盤のリスタート キックオフ後の攻めで、快足ルーク・モーガンに自陣からアウトサイドを攻略された。ベテランの坂井は「失点を振り返れば、自分も含め、慌ててタックルを外されたシーンばかり。こういう試合を勝ち切らないと」と振り返った。
勝てそうで勝てない戦いを重ねるうちにエナジーを奪われる。
そんな空気になることも過去には何度かあったが、今回はそのまま沈まなかった。
続くフランス戦とアルゼンチン戦は、それまで以上に連係をとってプレーした。互いにかける声の内容が具体的になったのが奏功した。
準備を重ねた沖縄合宿と現地に入ってからの練習では、ほとんどの時間をディフェンスに割いた。チームがやってきた「ネット」の網の目をより細かく、柔軟性のあるものにするためだ。
その組織力が機能し始めた。
試合で経験と修正を重ねたことで、やってきたことに血が通う。簡単にトライを許すことが少なくなり、ボールを手にする時間が長くなった。
ハードトレーニングの成果も出て、守り続けた末にターンオーバーを実現するシーンもたびたび出た。
先手、先手をとったことも大きかった。
フランス戦、アルゼンチン戦の前後半とも、先にトライを奪ったのはサクラのジャージーだった。
スコッドの中に外国出身選手は2人だけ。そのうち、ジョー・カマナが2日目途中で離脱したため、長い距離をいっきに走り切ることができる選手はいなくなった。つなぐ意識がより個々の中で高まり、細かなパスと方向転換の連続で防御を突破。そのチャンスを全員でサポートし、トライを重ねた。
坂井は「今回は日本人選手が多いというところを強みにして勝負したい」と言っていた。
それが大会終盤に実現した。
小澤大主将は、「若いメンバーが経験と自信を得たことがいちばんの収穫」と話した。
この大会への準備がセブンズへの初アプローチと言っていいほどの小山大輝が高い順応力を見せた。
吉澤太一が強気の走りで高い決定力を見せ、大学生(専大4年)の野口宜裕が積極的に動き、周囲をリード。香港では他と比べてプレー時間の少なかった本村直樹は最後の2試合でインパクトある活躍を見せ、安井龍太もボールキャリアーとしての役割を実行。中堅となった中野も安定感が出てきた。
13位は、なんの表彰もされない。
獲得ポイントも少ないから、コアチームに入った後なら物足りない。
しかし、少しでも選手層を厚く、競争を激しくして、7月のワールドカップ・セブンズ、8月のアジア競技大会にチーム力を高め続けたいチームにとっては、大きな意味のある2日間だった。