2015年ワールドカップの3位決定戦後、観客の祝福に応えるブライアン・ハバナ
(Photo: Getty Images)
ラグビーワールドカップ2019日本大会で、彼の勇姿を見ることはできない。
南アフリカのレジェンド、世界最高のトライゲッターと呼ばれたブライアン・ハバナが、2018年4月24日、今シーズン限りでの現役引退を発表した。もうすぐ35歳になるスピードスターは、膝の故障に苦しみ、昨年4月を最後に公式戦でプレーしておらず、現在所属しているトゥーロン(フランス)との契約が6月に切れることもあり、進退が注目されていた。
プロ生活16年。昨夏、手術を受けて復活を目指したが、叶わなかった。
ハバナはあふれ出る感情を自身のインスタグラムに綴っている。
「私が心から愛したゲームに、サヨナラとありがとうを言う時が来た」
元日本代表WTB大畑大介が樹立したテストマッチ通算最多トライ記録に並ぶまで、あと2つだった。しかし世界記録を更新することはできなかったものの、出場した124試合のほとんどが強豪国相手という厳しい戦いのなかで通算67トライは、誰もが認める偉大な記録である。ワールドカップ3大会出場で計15トライは、2015年11月に亡くなったニュージーランドのレジェンド、ジョナ・ロムーに並ぶ大会最多タイ記録だ。2007年のワールドカップでは8トライを挙げて南ア代表“スプリングボックス”の3大会ぶり2回目の優勝に大きく貢献し、IRB(現 ワールドラグビー)の年間最優秀選手賞にも輝いた。南ア国内表彰での大賞は3度受賞している。
スプリングボックスでの初キャップ獲得はスーパーラグビーデビューより早かった。ゴールデン・ライオンズやセブンズ南ア代表、U21南ア代表での活躍が認められて21歳のときに招集され、2004年11月のイングランド戦でテストデビューを果たした。40メートル走は4秒67、100メートルのベストタイムは10秒4といわれるスピードを武器に、瞬く間に世界的スターとなった。
クラブシーンでも多くの栄冠を手にしており、ブルズ時代にはスーパーラグビーで2回頂点に立っている。初優勝した2007年大会の決勝では、6点を追う試合終了間際にハバナが鋭いステップでシャークスの防御網を切り裂いてトライを挙げ、劇的な逆転勝利につながる名シーンとなった。その後、ストーマーズでも活躍。そして2013年にトゥーロンへ移籍後、ヨーロピアン・チャンピオンズカップ(旧 ハイネケンカップ)連覇に貢献し、南半球と北半球の両方でビッグタイトルを獲得した数少ないラグビープレーヤーのひとりとなった。
地上最速といわれるチーターと競走したこともある。野生動物基金をサポートするため、喜んでその企画オファーを受けた。
練習熱心で、リーダーシップがあり、若い選手の見本だった。ワークレートは高く、ディフェンスにも強いWTBだった。インターセプトが得意だったのは、ビジョンスキル専門のスポーツ科学者のもとで眼力を鍛えた成果でもある。特別な何か、「Xファクター」を持っていた男。快活な性格で、多くの人に愛された。