ラグビーリパブリック

101失点からの再スタート 立命館大学

2018.04.15
立命館大の中林正一監督(左)と古川聖人主将
 立命館は関西3位で臨んだ第54回大学選手権で慶應に大敗する。
 12−101。
 監督の中林正一(まさかず)は昨年12月16日、大阪・キンチョウスタジアムでの3回戦を振り返る。
「学生がかわいそうでした。地元なのにボコボコにされて…。すべて僕の責任です」
 監督8年目となる39歳は、自身初めての3ケタ失点の屈辱に顔をゆがませた。
 雪辱に燃える2018年。
 先頭に立つ主将には部員間の投票や中林の思いもあり古川聖人(東福岡?)がついた。
「今年はディフェンスに力を入れています。立命の強みと言われているけど、ここ数年、結果は出ていません。もう一度そこに戻ろうと、春から細かいところまでやっています」
 腕の締め上げ方や体の動かし方など、基本動作の確認をしっかりとする。
 昨年から取り組んでいる前に上がるシステムを磨き、細部にこだわりを持つ。
 古川は2年前、若手主体の日本代表で構成された「アジアチャンピオンシップ2016」に出場した。キャップ2を得る。
 ただし、そのあとはケガのため、公式戦出場はほぼない。一昨年は2、昨年は0。夏合宿で右手首、次年は右ひざを痛める。「ボールを獲ってきてくれる」と中林が信頼するFLは慶應戦もスタンド観戦だった。
「出られないもどかしさはありました」
 自分がグラウンドにいれば、あれだけの大量失点はさせなかった、その無念さが残る。
 右ひざのリハビリのため、グラウンド復帰は夏前になりそうだ。もやもやした思いが募る中でも、ベンチプレスは最高120キロから20キロ増の140キロに上げた。
「グラウンドに立てない僕がキャプテンをするのはどうなのかな、という思いはありました。でも、みんながそうやって、ケガした僕に託してくれました。それに応えたい」
 今年のスローガンは「Switch On」。ラグビーには常にオンで臨む。
 得点力アップに向けては、一昨年、同志社大で指導をした大西将太郎をBKコーチに招いた。昨年から教えている坂本和城とともにラインでのトライ増産を狙う。
「僕らの世代のスター。新しい風を吹き込んでくれたら、と思っています」
 中林は、CTBとして日本代表キャップ33を得た同級生に期待を寄せた。
 今年は「期分け」を見直し、春シーズン終盤は選手個々の体作りに重きを置く。
 例年6、7月は試合期間だった。今年は6月中旬から試合を省き、ウエイトトレ中心にしてさらなるサイズアップを目指す。
「定期戦が7月に入りましたが、この時期でフィジカルを強くしたいですね」
 6月16日の摂南、7月8日の中央で春シーズンのAチームの試合は終わる。
 チームの軸は古川を含めた前8人になってくる。中林は展望を話す。
「順調にいけば大きいFWが使えます」
 フロントローは渡邊彪亮が豊田織機、藤野佑磨が東芝とトップリーグ入り。その穴を紙森大樹(常翔啓光)、向仲涼(東海大仰星)、金沢一希(常翔学園)の3年生たちが埋める。高校日本代表として4月に入学してきた百地龍之介(東海大仰星)の評価が高い。
「体力測定はフォワードの中でずば抜けてよかったです。楽しみにしています」
 BKでは吉本匠(常翔学園?)が上がる。
「チーム事情でSOかCTBに入るかはわからないですが、攻守やキックを含めて、高いレベルにあります。怖いのはケガだけ」
 1年生ではCTB木田晴斗(関西大倉)。
「重みたいで体も強く、タックルも激しい」
 神戸製鋼の2年目、新人からレギュラーをつかんだ重一生にその姿を重ねた。
 チームにも中林にとっても力強いのは、先輩でもあるGMの高見澤篤の存在だ。今年度から部の強化に専心できる。
 高見澤は、立命館の職員として3月末で60歳定年を迎えた。雇用延長で学内には残るが、ラグビーに費やせる時間は格段に増える。
「今までは時間が取れず、迷惑をかけましたが、これから先はできるだけチームをサポートしたいですね」
 関西大学リーグ委員会の委員長職も同志社大元監督の中尾晃に譲った。
 公的な立場もなくなる。
 高見澤は、これまでリクルートや学外からの運営費調達の中心になってきた。
「これからは今までできなかったことをやっていきたい。強化にはお金がかかる。そのための外部資金をできるだけ集めたいです。自分にとっては社会的な挑戦になります」
 昨年からOBなどが運営する企業に働きかけ、寄付をつのる。その代わりに広告宣伝として、練習ジャージーに企業名を入れるなどの試みを続けている。
 今年の色はグリーン。そこに10の社名やマークが入っている。その数を増やしたい。
 今年の目標は大学8強だ。
 中林は言う。
「関西リーグで優勝すれば、選手権ではシード権が与えられ、自動的にベスト8になります。まずはそこですね。そこから優勝争いに絡んでいきたいです」
 グラウンドでの恥は、グラウンドですすぐしかない。秋から冬の本番に向け、濃紺と黄色のジャージーはこの春、トレーニングを重ねてゆく。
(文:鎮 勝也)

OBが関係する企業の寄付で作った練習用ジャージー。
お礼の宣伝広告を兼ねて、前後に企業名などを入れている。
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