ワールドカップ4強国(ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、アルゼンチン)の猛者を相手とするスーパーラグビーで厳しい戦いが続いている日本チームのサンウルブズは、4月14日に東京・秩父宮ラグビー場で、過去3回の優勝を誇るブルーズに挑んだが、10−24で敗れた。サンウルブズは昨季最終節でブルーズを倒していて、この試合もディフェンスで奮闘し前半を5点リードで折り返したが、後半に3トライを許して逆転負け。開幕から7連敗となった。
「非常に残念だ。チーム全体もそう思っている」と試合後に語ったサンウルブズのジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチ。前半はよくプレッシャーをかけていたと評価し、ハーフタイムは、選手たちは自信に満ちあふれていたと明かした。
「デイフェンスでいいところもあった。プレッシャーもよくかけられていた。しかし、気負いすぎてペナルティをとられたところがあったし、1対1でのミスが出てしまった。前半相手が持っていなかった自信をミスで与えてしまい、こちらはミスで自信を失っていった。プレッシャーをかけてトライをとれそうになりながらも、とれない。それが現在の力量」
試合序盤、ブルーズのLOパトリック・トゥイプロトゥがショルダーチャージでイエローカードを提示され、サンウルブズはSO田村優がPGを決めて先制した。
ボール支配率ではブルーズが上回っていたが、サンウルブズは堅いディフェンスで耐える。
すると21分、脳しんとうの疑いで一時的に退いた田村に替わって途中から入ったSOヘイデン・パーカーがディフェンスを突破し、ゴール前でCTBラファエレ ティモシーにつないでトライ。優秀なキッカーでもあるパーカーはコンバージョンも決め、10−0とした。
サンウルブズは前半にターンオーバーを8回成功。FLピーター“ラピース”・ラブスカフニやLOグラント・ハッティングらがブレイクダウンで奮闘した。
しかし、今季これまで1勝5敗と苦しみ7年ぶりのプレーオフ進出へ向けて負けられないニュージーランドのブルーズは、28分、自陣でのターンオーバーからボールをつなぎ、右外でパスをもらったWTBジョーダン・ハイランドがタックラー2人を振り切ってゴールラインを割り、5点差とした。
10−5で迎えた後半もサンウルブズは我慢のディフェンスを続けていたが、50分(後半10分)、WTBセミシ・マシレワがインターセプトを狙って飛び出したところをブルーズにつながれ、大外にいたNO8アキラ・イオアネが力強い走りで突破してゴールに持ち込み、コンバージョンも決まって逆転した。
「ブルーズは粘りのあるチームだし、Xファクターを持つ(一発でゲームの流れを変えられる)選手もいるので気をつけていたが、主導権を明け渡してしまった」(サンウルブズ:ジョセフ ヘッドコーチ)
サンウルブズはこの3週間、タックルミスから悪循環になっていった背景もあり、52分以降は守りで不調だったFB松島幸太朗らをベンチへ下げたが、55分にもタックルミスが続いて相手LOダルトン・パパリイを止められず、連続失点。
74分には、サンウルブズのFLラブスカフニがトライを狙いにいったNO8イオアネのグラウンディングを阻止するファインプレーがあったものの、敵陣で攻め続けたブルーズはその1分後、WTBハイランドが右隅にフィニッシュし、勝負を決めた。
雪辱してボーナスポイントも獲得したブルーズのタナ・ウマンガ ヘッドコーチは、「ハーフタイムはディフェンスの細かい話はしなかった。選手たちの頭のなかに後半のシナリオがあり、それをうまくやれたようだ。ここ数週間の積み上げの結果」と戦いを振り返る。
7連敗となったサンウルブズについて訊かれると、「努力が足りないからではないと思う。一つひとつの判断の積み重ね、ほんの少しの運に恵まれないから。それは最近の両チームに当てはまることだと思う」とコメントした。
ゲームキャプテンを務めたHOジェームズ・パーソンズは、「前半はとれそうでとれなかったが、後半はそこをとり切るように意識して、リズムが良くなった。特に後半の最初の20分、ブレイクダウンとエリアのコントロールがうまくいった結果だと思う。攻守ともにブレイクダウンでのディシジョンメイキングが良くなった。サンウルブズがどう戦ってくるかより、自分たちがやるべきことに集中した」と勝因を語った。
一方、サンウルブズの流大キャプテンは「後半の最初5分でコミュニケーションレベルが落ち、個人のタックルミスも出た。そこで後半の最初にとられたことで勢いが落ちた。前半のような自信がなくなった」と悔やむ。
今季、トップ5入りという目標を掲げたサンウルブズ。しかし全15チーム中、9節を終えて唯一勝星を獲得しておらず、最下位に沈んでいる。それについて問われたジョセフ ヘッドコーチは、「5位の設定理由は、高い目標を掲げ、気持ちを高めるためにも定めた。また、マーケティング的にも、それぐらいの方がいいと考えた。ブルーズは11人のオールブラックス(ニュージーランド代表)がいるが、それでも勝てなかったり、怪我人が出れば負けが込んでしまう。それが、このリーグ。タフなのは最初からわかっている」と話し、そのなかで、コーチ陣と選手たちで連携し、目の前の試合に集中してやっていると主張した。
来週からはニュージーランドに遠征し、21日にクライストチャーチで昨季王者のクルセイダーズと対戦、翌週にはウェリントンで現在首位のハリケーンズに挑む。サンウルブズにとっては、これまで以上にタフな戦いが待っている。
「サンウルブズの視点から見ると明るくないのは現実」と認めた指揮官。しかし、来年秋に自国で開催されるワールドカップをビッグターゲットとする日本代表の視点から見ると、収穫は決して少なくない。「多くの日本の選手たちがこのレベルを体感することができている。層の厚さという意味では、ジャパンAがいまニュージーランドに行っている。ワールドカップまでに、まだ15か月あると考えている」と語った。