前節のホームゲームでは、チーム発足3季目にして初めて観客数が1万人を切った。
国際リーグのスーパーラグビーで開幕6連敗中のサンウルブズは、成績、人気の両面で大きなジャンプアップが待たれている。
アウェイゲームを含めた6戦中5戦に出場した姫野和樹は、再確認した。結果がすべてという真実を。
「ここまで勝てないこと、それによってお客さんの人数が少なくなってしまう状況は、なかなか経験したことがなかった。勝つことって、本当に大事だな。改めて感じています」
帝京大在学中、すべてのシーズンで大学選手権を制した。新人ながら主将を任された昨季のトヨタ自動車でも、国内トップリーグで4強入りを果たした。生まれ育った愛知の御田中、春日丘高も県下有数の強豪校だったため、これほど負け続けたことはなかったという。
サンウルブズで現実の厳しさを知った姫野だが、最後は前向きに言う。
「負けが続いているこのチームのなかでも、どう気持ちを切り替えるか、どう雰囲気を作っていくかなど学ぶことはある。負けてはいますけどそれをポジティブに捉え、自分のなかに(感じたことを)吸収できたらなと思います」
4月13日、東京・秩父宮ラグビー場。同会場でのブルーズとの第9節を翌日に控え、記者団の共同取材に応じる。
観客減への感想以外には、2試合連続でプレーするNO8での働きについても聞かれた。次戦の先発15名中14人が前節と同じメンバーであることも踏まえ、明るいメッセージを重ねる。
「チームのなかでのNO8の動きには、慣れてきました。先週よりは思い切ってできる。アタックでどんどん前に出てチームに勢いをもたらしたいですし、(守りでも)もっとハードなタックルをしていければ。僕たちのやるプランはコミュニケーションや連携が大事だと思うので、その意味では(メンバーの固定化は)ポジティブに捉えています」
秩父宮での試合前日練習の折に姫野がカメラの前へ出るのは、前回の4月6日を含め3回目となる。報道陣のリクエストがあるためだ。
昨秋に日本代表入りした姫野は、海外出身者の多いサンウルブズにおける貴重な若手日本人選手でもある。極東の島国で有形無形の期待を背負うには、十分の立場にあった。
「コンタクトの場面で勝たなきゃいけない。(相手が)でかい分、低く当たっていく」
身長187センチ、体重108キロの23歳。先発FWの平均身長189.1、平均体重113.8というブルーズを前に、静かに腕をぶす。
(文:向 風見也)