3日間、6試合を戦い切って頂点に立った男子セブンズ日本代表。(撮影/松本かおり)
ラクな試合は最後までひとつもなかった。
簡単に取れたトライも同じだ。
しかし、そんな3日間を勝ち抜いてふたたび世界を転戦できることになった。
男子セブンズ日本代表がドイツを19-14で破りコアチーム昇格大会で優勝した。
「Cathay Pacific/HSBC 香港セブンズ 2018」(HSBCワールドラグビーセブンズシリーズ 2017-2018 第7戦・香港大会)の中でおこなわれている同大会(4月6日〜8日)。日本は日ごとに結束を高め、ファイナルでも先制した。
相手のキックオフボールを受けて辛抱強く攻め、ジョセ・セルが作ったチャンスをシオシファ・リサラと副島亀里ララボウラティアナラのコンビで仕上げる(トライはリサラ)。試合開始から1分12秒だった。
その直後も攻め込んだ。
今度は自分たちが蹴ったキックオフボールを確保して攻め込む。ドイツはたまらず故意の反則。チャンスを広げた。
しかし…その直後に空気が一変した。接点でターンオーバーを許すと切り替えされ、トライを奪われたからだ。ゴールも決められて5-7と逆転された(4分)。
残り時間はまだある。慌てる時間帯ではなかった。
しかし、前半終了間際に反則を重ねて追加点を奪われたときには嫌なムードが漂った(前半終了時は5-14)。
後半に入ってすぐ、相手の攻撃が乱れたところにつけこんで細かくパスをつなぎ、中野将宏のトライ、坂井克行のゴールで12-14と迫る。それで一時は落ち着くも、その後の攻撃で取り切れず、時間が減っていったときには再び空気が悪くなった。
残り1分を切ったところでボールを奪われ、トライライン前にキックを蹴られたときには万事休す…と「頭をよぎった」(小澤大主将)。
残り時間は50数秒しかなかった。
しかし、そこから息を吹き返した。
日本は、自陣ゴール前のラインアウトから攻めた。
後半の7分が過ぎたことを知らせるホーンが鳴る中、慎重に、しかし思い切った攻撃で少しずつ前へ出る。相手の反則を誘いながらも全員が肝に銘じたのは取り急がないことだった。
ボールを大きく動かしながら、ドイツ陣に攻め込んだ後だった。
互いに疲労は極限に達していたから、決してスムーズな攻撃ではなかった。PKからの攻撃でフェーズを重ねた後、中野が右中間に走る。外で呼ぶリサラにラストパス。背番号11が右スミにウイニングトライを決めた。
拳を突き上げた日本の選手たち。
ドイツの選手たち全員が芝の上に膝をついていた。
ダミアン・カラウナ ヘッドコーチは、ハードな試合を戦い抜いた選手たちを称えた。
「(昇格大会といえども)どこも強かった。その中で、チリに負けながらも、なんとか勝ち切った。この経験は本当に大きい」
強豪相手に、これまでも競る試合はやれた。でも、負けていては得られないものがある。そこを乗り越えて初めて見える景色がチームを変える。
同HCが大会中のリーダーシップを高く評価したベテランの坂井が「まだまだ伸びしろがあるチーム」と評した集団の中で主将を務めた小澤主将は、3日の間に一人ひとりの絆がまた深まったと感じた。
「毎試合レベルアップできた。コーチ陣と選手たちが団結できたからだと思います」
キャプテンは決勝の緊張感の中でも、仲間を信じ、勝つことを信じろと言い続けた。そして、勝利を手にして思った。
「やっとスタートラインに立てた」
自分が主将になったシーズンにコアチームから降格したチームを、ふたたび世界の舞台に上げた。きょうは、ひとまず笑顔になろうと思う。またすぐに、上を目指す日々が始まる。
世界一のセブンズ大会で浴びた大声援と勝利の喜び。それらを噛みしめながら飲む祝杯のビールは、最上級にうまいだろう。
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