クラブでの生活を通して人間形成を。学生を幸せにしてあげたい。(撮影/松本かおり)
一歩引いて見つめていた。
ピッチの上のパフォーマンスを。選手たちの姿勢を。
4月1日に開催された『Y.C.&A.C. JAPAN SEVENS』。参加した青学大のベンチに、かつて日本一になったことがある47歳の姿があった。
2017年度シーズンまで2季に渡って監督を務めた加藤尋久氏に代わり、4月1日付けで同ラグビー部監督に就任した大友孝芳氏だ。
昨季は関東大学対抗戦の7位に沈み、入替戦に出場したチームの再建を託された。
大友氏は茨城・茗溪学園高校時代、3年時に主将、NO8として花園で日本一になった。昭和天皇崩御により決勝戦がおこなわれなかったため大阪工大高(現・常翔学園)との両校優勝も、チームの独創的なプレースタイルは長く語り継がれるものだ。
青学大に進学後もプレーを続け、2年時には対抗戦3位となり、リーグ戦グループ上位校との交流戦にも出場(対抗戦とリーグ戦の1位〜4位校がたすき掛けで戦い、全国大学選手権出場権を争っていた)。4年時には主将を務めた。
伊勢丹でも(廃部の年まで)8シーズンプレー。その後、縁あって東海大のジュニアチームのコーチを13年。多くの経験を持って母校の指導にあたる。
今回の『Y.C.&A.C. JAPAN SEVENS』では2試合を戦い、勝利を手にできなかった青学大。3月に2回ほど練習を見学し、この日の戦いも見つめた新監督は、プレーそのものより、規律面が気になった。
時間は守れているか。
挨拶はどうだ。
もしこれまで、その部分を求められていなかったとしたら、そこから始める。
「青学のラグビーってなんだ。強みはどこだ。それを一人ひとりに考えてもらいたい。もし、その答がバラバラならひとつに決め、共有したい。そして、それを実現できるように毎日を過ごそう、と」
まず、自分たちを見つめ直すことから始める。このクラブを、社会に出て行く前の人間形成の場に。それが強くなるためのスタートにもなる。
頂点に立った高校時代は充実していた。チームを日本一に導いた徳増浩司監督の指導は、学生自身に考えさせるものだった。
「自分たちでやりたいプレーを考える。だからといって、決して学生任せではありませんでした。自分たちで考えることが楽しいと思わせる指導。やり甲斐を感じさせてくれた」
自分もそんな指導者になりたい。
学生たちが立てた今季の目標は大学選手権出場(関東大学対抗戦は5校出場できる)。それを実現するためのサポートをする。
この日の試合でも、アタックセンスとスピードを感じたという新監督は、「BKで勝負できるチームにしたい」と頭にあるイメージを口にした。
「BKが仕掛け、抜けたとき、必ずFWがサポートに就いているようなチーム。そういったあうんの呼吸でつながるプレーができたらいいですね」
黒地の腕に黄色ライン。伝統のジャージーにふたたびプライドを持たせる。
FWとBKの息が合ったチームにしたい。(撮影/松本かおり)