ラグビーリパブリック

甲子園→熊谷。日本航空高石川の校長監督、「伝える」「伝わる」の差痛感。

2018.04.03

日本航空高校石川ラグビー部の選手たちを見守る小林学監督(撮影:向 風見也)

 日本航空高校石川ラグビー部監督の小林学は、学校長も兼ねる。年度の変わり目は、新幹線で西へ東へと動き回った。
 野球部が兵庫・甲子園球場での選抜高校野球大会に、ラグビー部は埼玉・熊谷スポーツ文化公園での全国高校選抜ラグビー大会にそれぞれ出ていたからだ。優先するのは直接指導するクラブの引率だからといって、他の部活の応援も疎かにはできない。小林は表情を崩し、低く落ち着いた声で「嬉しい悲鳴です」と言った。
 野球の選抜大会は3月30日に3回戦があり、日本航空石川は明徳義塾を相手に逆転サヨナラホームランで勝利。初の8強入りの現場を見届けた小林は、その足で新幹線に飛び乗る。
 さらに東京駅構内の喫茶店「銀の鈴」に入店すると、高校日本代表としてアイルランドへ遠征していたアサエリ・ラウシと待ち合わせて埼玉へ向かった。翌日は、ラグビーの選抜大会の試合が組まれていた。
 ちなみに新3年のラウシは、3月28日にU19(19歳以下)アイルランド代表を40−24で制するなど貴重な経験を積んでいた。帰国後すぐに、高校の公式戦へ出ることとなる。本人はこうだ。
「きついですけど、頑張るしかない」
 3月31日。日本航空石川のラグビー部は、予選Gグループ初戦で高鍋高に敗れる。12−34。
 日本航空石川は冬の全国高校ラグビー大会(大阪・東大阪市花園ラグビー場)で昨季初の8強入り。高鍋は同大会で初戦敗退。ところがこの日の日本航空石川は、陣地獲得や防御で後手を踏んだ。
 指揮官は、「バックスリーの連動」に不満足だった。FB、WTBという最後列の3名の連係、前列への指示などがルーズだと感じた。その結果、走り込む、もしくは蹴り込むスペースを相手へ与えたと見るようだ。
 映像を確認して選手にだめを出した一方、小林自身はこうも話す。
「去年から教えていたことが全然できていなくて。例えばバックスリーの連動なども、チーム全体に言っていたつもりなのですが、それをちゃんと聞いていたのは試合に出ていた子たちだけだったんです。話が去年の子たちにしか通っていなかった。それは私の力不足です」
 指導者として「伝えた」つもりになっていた事項も、「伝わっている」とは限らない。今後は、全ての聞き手が当事者意識を持って受け取れるようアプローチしなければ…。前年の控え選手だったいまの上級生たちの動きを見て、指揮官は反省した。
 同じ失敗は、繰り返したくない。4月1日の第2戦では、今季からWTBのレギュラーとなった宮本武流が課題克服をアピール。前後へのキックを追う動きや味方と連携を取りながらの防御で、試合を引き締める。東京を29−21で制し、決勝トーナメント進出に望みをつなげた。小林は、この2日間で再確認した「伝えた」と「伝わる」の差異についてかみしめるのだった。
「今年は皆、不器用ですが、これもよさ。まじめにコツコツ、少しずつ、少しずつ伸ばしていこうと思っています」
 甲子園では、野球部が東海大相模と準々決勝でぶつかり終戦した。ここから小林は、ひとまずラグビー部の活動に専念する。3日は、こちらもラグビーと野球が盛んな大阪桐蔭と予選リーグ最終戦をおこなう。
(文:向 風見也)
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