国際リーグのスーパーラグビーに日本から参戦3年目のサンウルブズは、開幕2連敗中。シーズン5位以内を目指すなか、東京・秩父宮ラグビー場でのホームゲームを続けて落とした格好だ。
特に3月3日は、前年度最下位のレベルズに17−37で屈した。スタンドはため息に包まれた。
それでもどうだ。背番号7の29歳は前だけを見ていた。
「確かにきょうのゲームは十分ではなかった。振り返りはまだしていませんが、たくさんのすべきことがあるでしょう。ただ私たちには5位以内という目標があって、まだあきらめていません。スーパーラグビーは長くタフです。週末だけでなく、週の半ばもしっかりとパフォームしなければならない。厳しいフィードバックを受けるでしょうが、前向きに、何をすべきかを考えて次の試合に臨みたいです」
ピーター“ラピース”・ラブスカフニ。2戦続けてフル出場した南アフリカ人FLだ。身長189センチ、体重105キロと巨躯揃いの母国では小柄なFWと見なされるなか、相手を押し戻すタックルと運動量、ボールへの嗅覚を磨いてきた。
「皆は私のことを小さいと言います。ただ、犬が戦う時もサイズは関係ないはずです。その犬自身の、ファイトの心が大切です。高校時代の所属先(グレイカレッジ)も全体的に小柄なチームでしたが、私は相手を大きい、小さいというふうに見たことはないです。自分たちが何をしなくてはならないかを注視してきました」
スーパーラグビーの舞台ではチーターズ、ブルズで50試合に出場してきて、2016年からの2シーズンは日本のクボタに在籍してきた。
今季新加入となったサンウルブズでも首脳陣の信頼をつかみ、持ち味を発揮する。25−32と競った2月24日のブランビーズ戦では22本のタックル全てを成功させ、3つのターンオーバーを決める。レベルズ戦でも15本中14本のタックルを決めて1つのターンオーバーを奪っていて、状況に応じてタックルの高さやスキルを変質させる点についてはこう話している。
「毎回、そのシチュエーションに対応しているだけです。僕がタックルのバリエーションが豊富だとは、思っていません。その機会、機会でベストな対応をしている」
ここからファンが期待するのは、ラブスカフニの日本代表入りだろう。海外出身者の代表資格取得へは「当該国での居住3年以上」「他国代表(およびそれに準ずるチーム)での試合出場経験がないこと」がハードルとなる。ラブスカフニの居住期間はワールドカップイヤーまでにはクリアするが、代表経験については精査が必要と日本協会関係者は言う。
元20歳以下南アフリカ代表のラブスカフニは、2013年に正規の南アフリカ代表へ入ったことがある。当時はテストマッチデビューこそ果たしていないが、日本協会は本人が南アフリカ代表としてツアーへ帯同したか、非テストマッチでのプレー実績があったかなどの調査を慎重におこないたいという。
2016年には、日本代表候補とした海外出身者が他国の7人制代表に選ばれたことがあったと後になり発覚した出来事があった。「いろいろなフィルターをかけないと」とは、薫田真広・強化委員長だ。
もっとも当の本人は「ルール上の問題はない」と認識。異国でのナショナルチーム入りへも前向きだ。
「日本代表入りの機会が訪れたら、喜んで受けます。たくさんのことが前に進み、そうなることを願います」
サンウルブズは5日からラブスカフニの母国、南アフリカでのツアーに臨んでいる。当の本人は「第2のホームだと思っているので、帰れるのはいいこと。ただ、いまは日本が一番」。さまざまな期待を背に受け、チームファーストの心で戦う。
(文:向 風見也)