試合当日は、髪を狼の毛並みのようなくすんだグレーに染めてきた。何よりそのパフォーマンスでも、ヴィヴィッドな印象を残した。
2月24日、東京・秩父宮ラグビー場。サモア生まれニュージージーランド育ち、日本国籍を取ったばかりのラファエレ ティモシーが、日本のサンウルブズのアウトサイドCTBとして国際リーグのスーパーラグビー今季第2節に登場する。
チームにとって初戦となるこの日は、同じオーストラリア・カンファレンスの強豪ブランビーズを一時は19−8とリード。主導権を握った試合序盤、特に光ったのがラファエレだった。
7−3とリードして迎えた前半15分、自陣10メートル線エリア左中間で球をもらうと、せり上がった相手防御網の裏へ左足でキックを転がす。
「このプレーを、ずっと練習してきた。(分析上)ブランビーズの試合では、いつもディフェンスラインの後ろへスペースがあったから」
絶妙な弾道は敵陣10メートル線付近右端まで転がる。それをWTBのロマノ レメキ ラヴァが拾ったのを受け、サンウルブズの連続攻撃に火が付く。左へ、右へと球をつないだ先の敵陣ゴール前右で自軍スクラムを獲得した。
18分、そのスクラムからの連続攻撃が左へ、左へと連なり、SOのヘイデン・パーカーが防御の背後へパスを通す。そのコースへ鋭角に駆けこんだのが、ラファエレだった。
ポールの真下に回り込み、楕円の球をグラウンディング。直後のゴール成功で、14−3とスコアを広げたのだ。
「いいイメージでした。22メートルエリアに入ったら、FWがめっちゃ頑張った。クイックボールが出てきた」
続く28分には、敵陣中盤右中間のスクラムをきっかけとする攻めからラファエレが同22メートル線エリア左中間を突破。WTBのホセア・サウマキへラストパスを通し、チーム19点目をもぎ取った。最後は要所での反則などに泣き、25−32と惜敗。それだけにラファエレも「ブランビーズはコンタクトエリアもしっかりしていて…」と悔やむが、攻撃には確かな手ごたえをつかんだろう。
「スペースを探す。そのスペースでスキルを使う。(相手防御が)見てないところへ(球運びが)できたら」
身長186センチ、体重98キロ。国際舞台で戦えるサイズを有しながら、相手をかわす走り、左足でのキック、鋭いパスなどスキルフルなスタイルで評価を集めてきた。
日本代表としてはこれまで8キャップ(国際真剣勝負への出場数)を獲得。山梨学院大出身とあって日本語も流ちょうで、2シーズン連続参加となる今季のサンウルブズへはこう期待をかける。
「去年のチームは1週間だけチームビルディングをして、練習試合へ…。今年のチームは、3週間ハードワーク(別府、北九州、東京で長期合宿)をしましたね。チームのフィットネスレベルも皆のゲーム理解度も上がっている」
チーフスに3季在籍のリーチ マイケル、南アフリカ出身のグラント・ハッティングやピーター“ラピース”・ラブスカフニらスーパーラグビー経験者が相次ぎ加入しているいまのチームに、確かな手ごたえをつかんでいる。
「このチームはタレントも凄い。スーパーラグビーを経験した選手がたくさんいるから、楽しみです。このレベルでやっている選手は、スキャニング(目の前の状況を見ること)、コミュニケーションの質が素晴らしいです。後ろからスキャニングして、すぐコール(的確な指示出し)…という感じで」
実力者と手を組んだブランビーズ戦でのハイフォーマンスは、いわば自然な流れだったか。
次の第3節は3月3日に秩父宮であり、相手はレベルズとなる。前年はサンウルブズが17位、レベルズが18位と最下位を争ってきたチーム同士。負けられぬ戦いに備え、ラファエレは「レベルズもアタッキングラグビーをするだろうけど、うちもアタッキングを。楽しみな試合になります」。今度は美技を白星につなげたい。
(文:向 風見也)