レジェンドたちでスクラムを組むシーンも。左から堀越正己さん、
松尾勝博さん、村田亙さん。(撮影/松本かおり)
サクラのエンブレムを胸に、ともに戦った仲間が集まった。
2月3日、4日、青森県・弘前市で『津軽雪上ラグビー大会』が開催された。今年で52回目の歴史を誇る、地元の人たちに愛される大会だ。
青森工(A〜D)、弘前連合(東奥義塾、弘前南、弘前聖愛)、青森連合(青森工、青森商)、西北連合(五所川原農、木造)が参加した高校の部が3日におこなわれ、4日にはクラブや大学チームが参加。同日の試合は、スパイクの部とエンジョイが目的の『ながけり』(長靴)の部に分け、7人制で雪の上を駆けた。
また、八戸学院大女子ラグビー部と八戸レディースが参加して、女子の部でも熱戦が展開された。
プレーそのものも楽しいけれど、毎年やってくる『レジェンド』たちの存在も魅力のひとつになっている大会。今年北国の地に立ったのは、松尾勝博さん(愛称:ヨサク)、村田亙さん(ワタ)、堀越正己さん(モグ)の3人だった。
松尾さんは第1回〜3回、村田さんは第2回〜第4回、堀越さんは第2回〜第3回と、ワールドカップに出場している。赤白のジャージーを着て世界と戦った3人が『ながけり』の部に参加し、雪と格闘する姿は対戦チームと観戦者を楽しませた。
相変わらず筋肉質の体を維持する村田さんがピュッと走り、柔らかなパスを放るも、「イメージ通りに動けない。それがもどかしいけれど、それが楽しい」と笑った。
松尾さんが展開し、スペースに球を浮かせる。しかし堀越さんが遅れ、ボールが雪の上で弾んだ。
「ヨシヒト(元日本代表WTB吉田義人さん)ならバーッと走って取れたぞ」
松尾さんがそう笑えば、堀越さんは「秋田出身(の吉田さん)なら取れるかもしれませんが、僕は熊谷出身ですからッ」。
3人は女子チームに混ざったり、高校生合同チームに加わったりして、雪国の楕円球フェスティバルを楽しんだ。
松尾さんは駿河台大、村田さんは専大、堀越さんは立正大と、それぞれ大学チームの指導者だ。3人は大会初日には、高校生たちの前で講演会もおこなった。
その時間は、ただの昔話には終わらなかった。
3人は自分たちの高校時代の姿を紹介し、ラグビーへの思い、取り組み、そして国を代表して戦うことへ憧れた気持ちが、どれだけ自分たちの背中を押したかを語った。少年たちに伝えたかったのは、情熱を持って努力を継続することの大切さだ。ライバルと競い合うために、いかに工夫するか。そして、なりたい自分をいつも頭に描いて過ごす大切さ。ユーモアを織りまぜながらの話は、そこにいる若者たちの心をつかんだ。
高校の部では青森工Aが優勝し、スパイクの部ではsharks(八戸学院大)、ながけりの部ではオールホワイト(弘前市役所)が頂点に立った。女子の部は八戸学院大学女子ラグビー部が勝利。それぞれのカテゴリーでMVPやレジェンド賞も発表され、最後の最後まで盛り上がった2日間。
例年より雪は少なかった。しかし、雪上に黒いラインを引いたグラウンドに響く人々の声は、いつも通りかそれ以上だった。