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ドコモはリーグ6勝も1年で降格、勝った日野自動車は初昇格。入替戦舞台裏は。

2018.01.24
ドコモWTB渡辺義己にプレッシャーをかける日野自動車LOジョエル・エバーソン
(撮影:早浪章弘)
 1月20日、大阪・ヤンマースタジアム長居であった日本最高峰トップリーグの入替戦。今季2シーズンぶりのトップリーグを戦っていたNTTドコモは、下部のトップチャレンジリーグで2位だった日野自動車との2人目のレースで苦しんだ。
 ランナーとタックラーがぶつかる接点へのサポートが遅れ、懸命に守る日野自動車のジャッカル(密集で相手の球を奪いにかかる動き)を食らう。ボールを手離せない反則を取られたり、攻撃のリズムを遅らされたり。
 特に5−17とリードされた前半はその傾向が顕著だった。日野自動車ではNECから新加入の村田毅やサントリー出身の佐々木隆道といった日本代表経験のある仕事人が持ち味を発揮。NTTドコモはワーレン・ホワイトリー、リアン・フィルヨーン、パエア ミフィポセチといった海外出身選手を並べていたが、村田はこう捉えていた。
「結構、ボールに絡みに行けるシーンが多かったですよね。相手は半身ブレイクする(防御網を切り裂こうとする)分、(後ろのサポート役との間に距離が生まれ)寄りが遅れる。キーマンのいるチームって、ちょっと、遅れる。そこをうまく突けた。ペナルティをせずに、結果、(向こうの球出しを)遅らせた。その1、2秒の間にディフェンスがセットできればベター」
 NTTドコモは結局、17−20のスコアで降格の憂き目にあった。ベンチ外だったある選手は「最近の試合では(攻撃中の)2人目の寄りが遅いという課題があった。隆道さん、村田さんとジャッカルの得意な人が多いから大丈夫かなと思っていたら、案の定…」。
 敗れたダヴィー・セロン ヘッドコーチは、このように談話をまとめた。
「ボールの転がり方がひとつ違うだけで、いとも簡単に試合の流れがひっくり返る。プレッシャーがきつすぎた影響で、自陣からランをせざるを得なくなった。そこで日野自動車にしっかりディフェンスされました。相手はオフサイドギリギリではありましたが、しっかりと前に出られていました。気負い過ぎたのか、忍耐力がないのか、たくさん作ったチャンスも仕留めきれませんでした。ここまで非常にいい準備をしていたのですが、硬くなってしまった。なぜなのかはわかりませんが…」
 昨季のトップチャレンジ1での直接対戦時は、NTTドコモが68−12で制圧していた(1月3日/東京・秩父宮ラグビー場)。さらに今季のトップリーグでは、全16チーム中8位タイの6勝を挙げる。しかし総合順位決定戦では、戦前になされた組分けの妙で13位〜最下位を争うトーナメントに入った。そして、コンディションが万全ではないなか、日野自動車との再戦を迎えていた。
 かつて20歳以下の南アフリカ代表を率いた指揮官は、平静さを保って思いを明かす。
「今回のレギュレーションに何を言っても仕方がないですが、以前から『非常に危険だ』と申していました。我々は1週間前までトップリーグを戦っていて、けが人も増えていた。チームが100パーセントではない状態でこの試合に入りました。そこへきょうの日野自動車のような失うもののないチームが、3週間の準備をして全身全霊でやってきたら…。1年間努力してここまで来たにも関わらず降格の危機に瀕することは、とても危険だと思いました。必然的にこうなってしまったのでは、とも思いました」
 レギュレーションのいたずらとチャレンジャーのしぶとさにやられたNTTドコモは、戦前から首脳陣の刷新が既定路線だった。さらにこの午後は日本代表のヴィンピー・ファンデルヴァルトも欠場するなど、万全ではないコンディションで入替戦に臨んでいた。
 かたや日野自動車は、加盟していたトップチャレンジリーグが終わった12月24日以降、入替戦への準備を始めていた。この日は試合終了間際に47フェーズにも及ぶ猛攻を仕掛けられたが、防御網は乱さなかった。元NTTドコモの箕内拓郎FWコーチはこう感心する。
「相手を止めたというのもすごいですが、その間にペナルティを1回もしなかったのもすごかった。皆、ゾーンに入っていた。観ていてドキドキしましたけど、楽しかったです。ここまで選手の成長を感じられることはなかなかないので」
 もちろん喜ぶだけではなく、来季に向けて「まだまだ強化すべきところはたくさんある」という。念願の初昇格を決めたトップリーグの舞台では、この日のNTTドコモ戦クラスかそれ以上の強度の試合が続く。元日本代表主将でもある箕内コーチは、シビアな目線で前向きな気持ちを保って未来を見据える。
「きょう(入替戦)は勝ちましたが、このままトップリーグで勝っていけるのかと言われれば、足らない部分がいっぱいある。全て、です。上位チームと同等やるというレベルじゃないですが、早くそこに到達したいです。せっかくトップリーグに上がったのだから、悔いのないようにしてシーズンを迎えたいです」
(文:向 風見也)
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