ラグビーリパブリック

いつもの村田大志。竹本竜太郎、ついに。サントリー同期組、決戦への充実。

2018.01.13
ハイボールのキャッチもうまい。安定感のあるCTB村田大志。(撮影/松本かおり)

いきいきとした表情。竹本竜太郎は「仲間にエナジーを」。(撮影/松本かおり)
 パナソニックの司令塔、ベリック・バーンズはサントリーの13番を警戒しているそうだ。
 村田大志。サントリーのアウトサイドCTBはいつも気のきくプレーをする。
 1月13日に秩父宮ラグビー場でおこなわれる日本選手権決勝(トップリーグ1位決定戦/サントリー×パナソニック)では、持ち前の幅広く守れる能力をチームに期待されている。ターンオーバーからのトランジション(攻守の切り替え)を得意とする相手を反応良く止めたい。
 攻撃時にはスペースを見つけ、そこに走り込む決定力あるバックスリーに好球を渡す役となる。
 早大から入社して今季が7年目。シーズンの勝負どころに、最高のコンディションで臨む術も身につけている。「この1年やってきたこと、成長したことを出す。(シーズン最後の試合を)1年でいちばんいい試合にしたい」と話す態度にも落ち着きがある。
「パナソニックは、とりあえずボールを動かすというより、スキがあるところを必ずついてくるイメージです。強いFWを前に出させたらバーンズが自由に動く。全員が強いボールキャリアーなので、我慢強くディフェンスしないと。アタックも我慢が大事。そして精度が求められる。スペースができた瞬間を見つけ、そこを攻める」
 パナソニックとの戦いは、いつも一筋縄ではいかないと知っている。
 だからこそ、村田のような存在が勝負の鍵を握る。
 その村田と同期入社で同じ長崎出身のFB竹本竜太郎(長崎北出身。村田は長崎北陽台出身)も、日本選手権決勝出場予定の23選手の中に名を連ねた。
 こちらは、中堅ながら日本ラグビーの頂点を争うような大舞台に立つのは初めてのことだ。「パナソニックは、ミスを突いてくるのがうまい印象です。だから安定したプレーをしないと。強いプレーが求められると思っています」と話す。
 胸が高鳴っている。でも、気負いすぎることなくプレーしたい。
 慶大から入社して昨季までの6シーズン、ほとんど出番はなかった。5歳上の兄・隼太郎(NO8)もチームに在籍するが、同時にピッチに立ったのは数回のみ。「僕が試合に出られなかったので」と苦笑する。
 入社した2011年は2試合に出場。その翌年、翌々年は3試合に出場した。
 しかし、2014年は出場機会なし。2015年もプレシーズンゲームのみのプレーと、ピッチは遠かった。昨年も出場機会がなかった。
 そんな状態は今季も続いていたが、第10節の近鉄戦で先発FBのチャンスを得ると、第13節でも同様の出場機会を得て、日本選手権準決勝でリザーブスタートながら後半20分過ぎから戦いの中に入った。ファイナルでも前戦同様に23番を背負う。
 チームが頂上決戦に勝ち進んでも、これまでは、その戦いをいつもスタンドから見つめてばかりだった。大勝負のときにスパイクを履いているのは今回が初めてだ。
「自分が出場したときのイメージを頭に描きながら準備をして、出番を待ちたいと思います。そしてピッチに立ったらワークレート高くプレーして、先に出場している選手たちにエナジーを与えたい」
 自分の役目をそう口にした。
 左ききが重用されている。
 左足でのキックによりゲームをコントロールするマット・ギタウがベンチに下がると、竹本にその役目が求められる。
 天賦のものを武器にできるようになったのも、総合力が高まったからだ。試合に出られない時期も腐らず、自身の試合、練習での映像を徹底してレビューした。映像をLINEで共有して、仲間にアドバイスをもらったりもした。
 そんな積み重ねが実った。周囲とコミュニケーションを保ち続けた結果、チームにフィットする選手になれた。
 オフの個人面談がこわい時期もあった。チームの構想から外れたと告げられたら…と。
 しかしいま、その表情は充実している。
 チームマンとして、試合に出る選手たちのサポートに尽くすことに不満はなかったし、やり甲斐も感じていた。でも、ひとりのプレーヤーとしては、チームが勝っても悶々とするものはある。その感覚を知る者だからこそ感じる、ピッチに立てる喜びがある。
「試合に出られるようになると、やっぱり、いいサイクルに入れるんです」
 明確な目的を持って準備して、試合でプレーする。うまくいかなかったこと改善して、また次への準備を始める。
 戦いの中にいられることの心地よさをあらためて知った。本当に、諦めなくてよかった。
 決戦前日、穏やかに言った。
「楽しみたい。責任を果たしたい」
 素直にわき出る気持ちだ。
 出番が待ち遠しい。
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