入社5年目の中鶴隆彰。14番を背負う。(撮影/松本かおり)
左WTB(11番)の江見翔太は入社4年目。(撮影/松本かおり)
連覇か。王座奪還か。
1月13日に秩父宮ラグビー場でおこなわれるサントリー×パナソニックの日本選手権決勝(トップリーグ1位決定戦)には実力伯仲の好ゲームの予感が漂う。両チームにはトッププレーヤーたちが並ぶ。トイメン勝負も楽しみな顔合わせが多い。
WTB同士のやり合いもハイレベルなものとなりそうだ。
サントリーは江見翔太(11番)と中鶴隆彰(14番)。両者とも昨季サンウルブズの一員としてプレーした。また、ふたりともトップリーグのトライ王に輝いたこともある。
パナソニックの11番と14番は、お馴染みの福岡堅樹と山田章仁。日本代表の両翼として何度も国際舞台に立ってきたふたりだ。
得点に絡むことが多いWTB同士だけに、その争いの結果が勝負に直結する可能性も少なくない。
百戦錬磨の山田のトイメンに立つ江見は、「アキさんとはジャパンで一緒にトレーニングしたりして、お互いに強みや苦手なことも分かっている」と話す。
「それだけに、どれだけこちらの弱みを見せず、相手の強みを封じ込めるかが大事。アキさんをはじめ、あちらのバックスリーにトライを与えると勢いが出ると思うので、リアクションよく反応して止めたいですね」
山田の個人技に要注意も、SH田中史朗とのコンビネーションにも気を配る。
「チップキックとかをうまく使ってくるので、ちゃんと備えたい」
中鶴と福岡は同じ玄海ジュニアラグビークラブの出身だ(福岡)。2学年違うから、中学時は3年生と1年生でともにプレーしたこともある。
それだけに、こちらも互いのことはよく分かっているが、中鶴は昔以上に手強い存在となった後輩をいい意味でリスペクトする。
「フリーでボールを持たせるといっきに走られます。責任を持って止めたいですね。一瞬でも気を抜いたら後悔する相手だと思っています」
ターンオーバーからの切り替えを得意とする相手への対応も、チーム全体で準備してきた。
「アンストラクチャーの状態への対策は重ねて来たので全員が意識できています。その中でも、外側からの声が大事なので、FWにもどんどん指示してチームの助けになりたいですね。内側には信頼できるディフェンダー、村田大志(CTB)もいるので連係をとっていきます」
頭と体をフル回転させる80分となりそうだ。
サンゴリアスの両翼は、アタック面にも自信を見せる。
シーズン序盤は万全のコンディションとはいかなかった江見だが、シーズンの深まりとともに調子が上がってきた。1月6日におこなわれた日本選手権準決勝、ヤマハ発動機戦でも1トライを挙げて49-7と圧倒するチームの勝利に貢献した。
「ヤマハ戦は準備で勝ったと思います。試合前のイメージ通りのプレーができた。自分たちのアタックで相手にプレッシャーを掛けたことで、ヤマハにはフラストレーションがたまっただろうし、慌ててミスが出た。決勝も、そうできたらいいですね」
中鶴も自身とチームの進化を口にした。
トライ数はリーグMVPに選ばれた昨シーズンの17から今季は5に減ったが、プレーのスタンダードは上がったと自負する。
「大事なのは勝利。自分で奪ったトライこそ少なくなりましたが、トライにつながるプレーなど、そういった貢献はできていると思っています。ディフェンスでも体が張れた。チームも昨シーズンまでは攻めの方向が単純な面もありましたが、今シーズンはどこからでもスペースを見つけ、広く攻められています。それはリーグ戦でパナソニックに負けてから取り組んだもの」
言葉の端々に確信が感じられた。
昨年の日本選手権決勝では15-10と勝ったものの、ノートライのまま頂点に立ったサントリー。チームを率いる沢木敬介監督は、「ファイナルラグビーは何よりも勝つことが大事。自分たちのスタイルを出すことがそれにつながると信じるが、(得点の)チャンスはそう多くないと思っている」と話す。
その限られた好機を江見と中鶴のふたりが、どれだけ得点に結びつけられるか。両翼が何度も笑顔になる展開は、チームが目指しているスタイルの実現と重なる。