最後の最後まで勝利への執念を見せ続けた流経大柏。(撮影/牛島寿人)
京都成章(京都)で31年目になる湯浅泰正監督は、試合後、神妙な面持ちを崩さなかった。
「思いもよらないミスを連発していました」
全国選抜大会準優勝でAシードの京都成章は、この日度重なるハンドリングエラーに苦しんでいた。
2018年元日、大阪・東大阪市花園ラグビー場でおこなわれた第97回全国高校ラグビー大会の3回戦。
千葉県代表の流経大柏に対し、前半を5点リード(5−0)で折り返した京都成章は、後半最初の10分間で5度のノックオンを犯していた。
「(この日のようなノックオンの回数は)練習でもないですよ。雨の日でもこんなに落とさないです」(京都成章・湯浅監督)
フェイズを重ねてラインブレイクを狙い、裏へ出たところでボールを素早く展開するアタックプランだった。しかし流経大柏の好守もあり、描いた青写真は現実にならなかった。
京都成章のSO押川敦治(3年)キャプテンは緊張があったと振り返った。
「第1グラウンドということで、硬くなってしまいました。ゲームメイクの部分など、僕自身も焦っていました。ミスに対しての修正もできていなかったので、そこは個人としても大きな反省点です」
監督としては2度目の花園となった流経大柏の相亮太監督は、これまでの経験からボールの保持を重視していた。
「花園では前後半でどれくらい攻めているか――これまでの花園で(その)学びがありました。彼らも一生懸命攻めてくれたと思います」
先発15人中6人が3年生、9人が2年生という布陣だった流経大柏は、スタートからの10分間のほとんどを敵陣でプレー。
前半16分には京都成章のWTB堀田礼恩(3年)が、CTB南部翔大(2年)にオフロードパスを通してトライが生まれたが、これがこの日唯一のトライ。
流経大柏はディフェンスでも奮闘し、相監督が「我々のシナリオに近かった」という0−5のスコアで前半を折り返した。
試合の最終盤にもボールを保持して攻め続けた流経大柏。
しかし立ちはだかった壁の硬さは、想像以上だったかもしれない。
流経大柏は後半21分からノーサイドまで敵陣に居座り続けた。
1トライ1ゴールで逆転の状況。流経大柏はFW勝負にこだわった。ラックサイドを突き、モール形成を試みては崩され、またラックサイドを突き――そして26フェイズを重ねた。
しかし停止したモールから展開した27フェイズ目。青×黄ジャージーがラックに襲いかかった。HO相根大和(3年)がラックで相手に絡みついて、ノット・リリース・ザ・ボールの反則を奪取。値千金のブレイクダウンワークが決め手となり、京都成章が5−0 で歓喜を迎えた。
京都成章の湯浅監督は「最後はゲームマネジメントでもミスをしていましたが、その中で光っていたのはディフェンス。それは褒めてやりたいですね」と防御については合格点。
そして胸を打つ健闘を見せた流経大柏。指揮官の相監督は「Aシードのプライドを感じました」と最後まで崩れなかった京都成章を称えた。もうひとつ、指揮官は卒業していく3年生へ手放しの賛辞も送っていた。
「3年生は14人しかいない代でした。そんな彼らがAシードの京都成章さんに対して、しっかり勝負にいっている姿を見て、嬉しくて、感動しました」
(文/多羅正崇)