ラグビーリパブリック

テンポがキー。全国優勝5回の常翔学園高、仙台育英高を制し打倒シードへ。

2017.12.29

仙台育英戦で常翔学園のゲームキャプテンを務めたSO高桑基生(撮影:松本かおり)

 宮城県代表である仙台育英高の、千葉真之亮は、落ち着いた態度で全国高校ラグビー大会の初戦に臨んでいたようだ。
 2017年12月28日、大阪・東大阪市花園ラグビー場の第3グラウンド。常翔学園高は、3チームが全国に出られる大阪府勢の一角で、昨季8強入りしている。かたや仙台育英高は、21年連続23回目の出場だった前回は2回戦敗退。それでも千葉は、自軍のニールソン武蓮傳コーチの名前を出してこう意気込んだ。
「常翔学園高の方が強いと言う人がほとんどだったと思うんですけど、自分たちは今までやってきたことを出せば勝てると思っていました。ニールソンコーチが工夫してウェイト、スキルなどの練習を考えてきてくれた。教えてもらったことだけをやれば、勝てる」
 身長173センチ、体重71キロと小柄でも高校日本代表候補に入ったFBの千葉は、味方FWが肉弾戦で差し込まれるなかでも隙を逃さない。
 常翔学園高が波状攻撃を仕掛けていた前半10分、自陣10メートル線付近右で相手のキックを受け取る。約60メートルの一本道を独走し、7−5と2点差に迫る。
 21−5と離されていた23分にも駆ける。そこまで2トライの相手WTB、河野竣太がハーフ線付近でオフロードパスを放つも、仙台育英のFLである長利慶太がインターセプト。そこへ並走した千葉がパスをもらい、約50メートルを突っ切ったのだ。
 21−12と迫る。千葉は言う。
「チャンスがあればそこを突く。リアクションは、意識しました。いかなる時も、すぐ反応できるように。最初に5−7になった時は『イケるんじゃないか』と。皆の気持ちを乗せていきました。(相手との)すれ違いざまで抜ける間合いは、自分の中でわかっているつもり。それを試合で使えたと思います」
 常翔学園高がより加速したのは、28−15と13点リードで迎えた後半からだった。前身の大阪工大高時代から通算して5度日本一という名門は、ひとたび防御を破ると二の矢、三の矢を繰り出す。
 12、14分と、防御を引き寄せ大きく球を振る形で加点。1年生LOの為房慶次朗らが接点周辺での突進役として機能し、河野は後半24分に自身3トライ目を挙げてだめを押した。61−15。
 司令塔のSOでゲーム主将の高桑基生は、初戦をこう振り返る。
「前半は入りが悪かったのですけど、後半になるにつれて強みのFWが縦に突いて、テンポアップしてBKが取り切れるようになった。仙台育英高さんのディフェンスは前に出てきてプレッシャーがかかったのですが、外に回すだけじゃなくて縦に(攻防の境界線を)切るプレーもできた」
 卒業後は東海大に進む千葉は、大敗に「後半になると相手も本領を発揮してきて、こっちもスタミナが足りなくなって」。関係者が指摘する競技力の地域格差を、皮膚感覚で明かす。
「フィットネスのトレーニングもしてきたのですけど、常翔学園高はそれを上回るアタックをしてきた。うちのディフェンスが中途半端に前に出た時に、ギャップを突かれた。関西選手は東北にはない身体の芯の強さを持っていた。経験の浅さが出たと思います」
 一方、常翔学園高は、30日の2回戦で島根県代表の石見智翠館高とぶつかる。
 向こうは勤勉さで鳴らし、昨季の8強同士で今年はシード権を獲得している。高いハードルが待ち構えるなか、高桑は、「テンポを上げることが、自分たちが勝つための一番のキーになる。テンポを作るラグビーができたら、勝ちにつながる」。自己肯定感を高め、関門を突破したい。
(文:向 風見也)
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