ラグビーリパブリック

新人ゲーム主将起用のNECは「…を速くさせない」。王者サントリー反省。

2017.12.11

NEC1年目の亀井(左)は9日のサントリー戦でゲームキャプテンを務めた(撮影:?塩隆)

 日本最高峰トップリーグで前年度王者のサントリーは、正式に連覇へのトーナメント出場権利を獲得した。
 12月9日、東京・秩父宮ラグビー場での今季第11節で10勝目を挙げ、勝ち点を47に積み上げる。2つある組のうちレッドカンファレンスの首位を守り、プレーオフに進める2位以内を確定させた。
 もっとも試合内容を振り返れば、「結論から言えば、本当に質の低いラグビーをしてしまった」とSHの流大主将。対するNECに接点からの快適な球出しが制限され、スペースを攻略しながらトライラインを割れないシーンを多く作ってしまったようだ。
 例えば、20−13と7点リードで迎えた後半25分ごろ。中盤からフェーズを重ねて敵陣22メートルエリアまで進むも、NECの壁を崩しきれず。最後は接点で球を相手に譲り、同8分から投入された流はこう悔やむ。
「サントリーがボールを持って相手をコントロールしないといけなかったのですけど、ブレイクダウン(接点)、イージーなパスミスも多くて…」
 王者は結局、28−13で勝利も、自らのスタイルを貫ききれなかったと反省する。もっともそれは、NECの健闘が光ったことの裏返しとも取れる。青いセカンドジャージィをつけたフィフティーンは、防御時の肉弾戦で懸命に身体を当てた。サントリーがスコアを取り切れなかったと悔やむ一連のシーンでも、NECはしぶとかった。
 12月3日の前節では、同じホワイトカンファレンスで首位のパナソニックに5−54と屈していた。しかし、落ち込まずに立ち上がった。この日の反則過多に留意しつつ、サントリーの流れる攻めへの対策を練ってきたようだ。HOの臼井陽亮は語る。
「前に出るなかで、相手を止める。球出しを、速くさせない。かといって、ラックに人数をかけすぎない…。皆で声をかけ合いながら、それをずっとやってきました」
 前半こそ要所の反則で相手に攻撃権を渡したものの、後半は競り合った。臼井はこうも言う。
「今週はいい準備、いい反省ができて、きょうは試合中も『いける、いける』とゲーム中に話していた。負けてはしまいましたが、いいリズムにはなってきているかなと思います」
 昨季は16チーム中10位と低迷し、今季は日本代表の田村優ら多くの主力を放出して迎えていた。それでも就任2季目のピーター・ラッセル ヘッドコーチ(HC)のもと、戦術・戦略の理解と共有に注力してきた。ここまで5勝6敗と負け越すなか、複数の選手から「周りの皆さんが思われている以上に、チームの雰囲気はいい」との言葉が漏れてきていた。
 この日はPRの瀧澤直主将が故障欠場。新人の亀井亮依がゲーム主将を務めた。ラッセルHCいわく、「亀井はもともと我々のチームのリーダーシップグループの一員」。昨季は大学選手権8連覇を果たした帝京大で主将だった亀井ゲーム主将は、同じ大学出身の大和田立とFLに入って地上戦で躍動した。
 試合が終われば、試合展開をわかりやすく相対化。好守で魅するもその後だめを押されたという皮膚感覚を、端正な口調で語った。
 
「後半は自分たちのラグビーができましたが、最後はサントリーさんのメンバーチェンジによるギアチェンジやこちらのフィットネス不足などによるディシプリンの緩さから、最後は差をつけられたと思います。ゲームの肝となる時間帯での正確なコミュニケーションは、練習のなかでも足りなかったのかなと、試合を終えてみて感じます」
 新加入した社会人チームを、元学生王者の尺度で捉える。まだまだできることはあると実感する。
 
 順位争いが本格化する来週の第12節。ホワイトカンファレンス8チーム中4位(暫定)のNECは16日に神奈川・ニッパツ三ツ沢球技場でキヤノンと、サントリーは17日に秩父宮で神戸製鋼とそれぞれぶつかる。
(文:向 風見也)
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