福岡工業大が長く頂点に君臨してきた九州学生リーグに、風が吹いた。
11月26日から始まる「第54回全国大学ラグビーフットボール選手権大会」に、九州代表として出場するのは福岡大だ。19日にミクニワールドスタジアム北九州で九州学生リーグ1部の1位・2位決定戦がおこなわれ、福岡大はスピーディーなラグビーで日本文理大に38−21で勝利。7年ぶり23回目の優勝を遂げた。
日本文理大は、7連覇を狙っていた福岡工業大を準決勝(上位4チームによる順位決定トーナメント1回戦)で倒し、1967年の創部以来、初の優勝決定戦進出という旋風を巻き起こしていたが、栄冠獲得には一歩届かなかった。
レギュラーシーズンのリーグ戦は、福岡大が3位、日本文理大は4位だった。文理大にいたっては、福岡工業大に0−84と完敗し、福岡大にも21−61と大差で敗れていた。
実は順位決定トーナメント前、福大と文理大は合同練習をしていた。福大の竹原慶一郎キャプテン(LO)はそのとき、「文理大はリーグ戦のときよりも強くなっているのを感じたし、福工大を倒した試合(準決勝:33−21)も観戦して、勢いに乗らせたら危ないチームだと思っていた。なので、自分たちもしっかり気持ちを高めてこの試合に臨んだ」。
決勝の序盤、文理大がペースをつかみかけた。しかし、福大は相手ボールスクラムを圧倒し、流れを変える。福大のフォワードのサイズは小さいが、かつて日本代表PRとして活躍した西浦達吉FWコーチのもとで強化してきた成果が出た。
文理大の永野裕士監督は、「最初のスクラムでプレッシャーを受けて反則してしまったのが痛かった」と悔やむ。
それでも文理大は前半、福工大戦でも勝因となったディフェンスで奮闘する。福大の高速アタックで2トライを奪われたが、前へ出てプレッシャーをかけ続け、最初の40分間のスコアは12−7と接戦だった。
ハーフタイム前、文理大がゴールに迫りフォワードがピック&ゴーを繰り返したが、福大の守りも執念がありグラウンディングを許さなかったのも、のちに明暗を分ける要因のひとつとなった。
後半の立ち上がり、福大がボールを大きく動かし、左外にいたLO眞鍋大輔がゴールへ駆け抜け点差は広がった。築城康拓監督いわく「ボールを動かす、スピーディーなアタッキングラグビーが特長」の福大は、敵陣でプレーし続け、60分(後半20分)、65分、73分とトライを重ねる。
それでも食らいついた文理大は、久しぶりに敵陣に入った70分にボールをつないでトライを奪い、ロスタイムにもスクラムからの連続攻撃で取りきり意地を見せたが、それが精いっぱい。
栄冠は福岡大学に輝いた。
敗れた日本文理大の永野監督は、「リーグ戦の前半は選手個人の判断を大事にして戦い、経験を積みながら個々が成長し、選手中心のミーティングも重ねながらチーム作りをしてきた。プレーの精度や判断力がかなり成長してくれたと思う。それと、2人体制のすばらしいキャプテンがウチにはいた。黒木龍平と壹岐和哉がリーダーシップを発揮してくれて、きょうも最後まであきらめずに戦う姿勢を示してくれた。そこも成長のキーポイントだったと思う」と今シーズンを振り返る。
チーム史上最高の成績を収めたことについては、「こういう経験ができたことは大きい。本当に財産になっていくと思う。しかし、あくまでも進化の途中。もっともっと進化していきたい。またここ(決勝の舞台)に戻ってこれるように。そのプロセスは今年の4年生が教えてくれたと思う」と語った。
黒木キャプテン(FL)は、「これまでは4位と5位を行き来していた。華やかな経歴を持っている者はいないし、派手な選手もいない。スタッフも少ないが、筋トレなども黙々とやってきた。きれいなラグビーはできないけど、文理らしく、泥臭く身体を張っていくのが自分たちのやり方だと思っているので、決勝でもそれを心がけてプレーした」と話し、初の決勝進出は、「思いのほか多くの人が応援に来てくれてビックリした」と笑った。
もちろん悔しい。でも、精いっぱい、やりきった。
壹岐キャプテン(SH)は、「後輩たちは次につながるいい経験を積めたと思うので、大学選手権に出場できるようなチームになるためのきっかけになってくれたらと思う」と語った。
一方、福岡大は古豪復活だ。
竹原キャプテンは、「7年ぶりの優勝をOBの方々も喜んでくれると思う。もう一度、九州1位になれたのは本当に大きいこと。福大の新たな歴史の一歩になればと思う」と、凛々しい表情でそう言った。
いざ、全国大学選手権大会。
築城監督は、「全国ではフィジカルが強い相手と対戦することになると思うので、ディフェンス強化にフォーカスしたい。そして自分たちの持ち味であるアタッキングラグビーを磨き、そのための重要ポイントとなるブレイクダウンやセットピースも精度を上げていきたい」と意気込む。
竹原キャプテンは、「ここからスタートという気持ちで、切り替えて準備したい。いい試合ができるように、チームとしてしっかり固まっていきたい」と語った。
なお、今年度の大学選手権に臨む東北・北海道代表は東北学院大(2大会連続5回目の出場)、東海・北陸・中国・四国代表は朝日大(6大会連続6回目の出場)に決まった。
決勝後、永野監督の話を聞く日本文理大の選手たち(撮影:RUGBY REPUBLIC)