満を持しての実戦復帰に際し、本人も「最後の試合から6か月も空いていました。すごく楽しみです」と心を躍らせる。
今年度から新設されたトップチャレンジリーグで開幕5連勝中の日野自動車は、11月19日、九州電力とのファーストステージ第6戦目に挑む(東京・駒沢陸上競技場)。移籍後初のメンバー入りを果たしたのが、東京ガスから加入のヘイデン・クリップスだ。2月からはサンウルブズの一員として国際リーグのスーパーラグビーへ挑んだ27歳が、リザーブスタートで出番をうかがう。
「いい判断、いいコールを下したい」
身長177センチ、体重85キロと決して大柄ではないが、パス、キックを的確なスペースへ差配。過去3シーズンは東京ガスのSOとして、日野自動車も加盟していた下部のトップイーストでプレーしてきた。
「環境を変えたかった。トップリーグを目指せるチームへ」と新天地へ移った今季は、サンウルブズ参加中の怪我で戦線を離脱。国際舞台を経験できた喜び、雌伏期間の思いをこう振り返る。
「スーパーラグビーではすごくいい経験ができました。世界一流の選手との試合、(各国への遠征で)いろんな場所へ行く機会を得られました。ニュージーランドのチーム、南アフリカのチームと、いろいろな国のチームとの対戦が続きました。相手の強みや弱みに合わせてゲームプランが変わり、毎週、毎週、それを勉強しなくてはいけなかった。怪我はすごく残念ですが、これもゲームの一部なのでしょうがないと捉えました。サンウルブズの残りの試合は全部観ていましたし、早く日野自動車でプレーしたいと思っていました」
15日は九州電力戦に向け、都内で攻撃のシステムや約束事を確認。クリップスが実戦練習の主力組へ入った様子について、細谷直監督が「皆が水を得た魚のように泳いでいる。いかに彼にクイックなボールを出せるか。タイトファイブ(前列5人)の基本(前進や接点の制圧)の積み上げにかかってくる」と、HOの廣川三鶴主将は「僕はBKについては素人ですが、(クリップスの後ろに立つ)CTB陣は楽しそうにやっていました」とそれぞれ語る。
当の本人も、新たな環境に目を細めている。
「ずっと日本のチームにいますが、どの場所にも親切ないい人がいる。ここに移ってきた時も、すごく対応しやすかったです」
9月に開幕したトップチャレンジリーグでは、8チーム中上位4チームがセカンドステージで国内最高峰のトップリーグ入りを争う。優勝すれば自動昇格が叶い、2〜4位はトップリーグ下位との入れ替え戦に移る。日野自動車は次の九州電力戦を終えると、25日にはホンダとのファーストステージ最終戦を控える。すでに4強入りした者同士の2連戦を経て、12月からの大本番に向け力を蓄える。
クリップスは「個人的にも、日野自動車のためにどんどんいいプレーがしたい。トップリーグへ行けるよう、毎週、毎週チームがよくなるようにしたい」。悲願達成に向け、最後の後押しをしたい。
(文:向 風見也)