冬の花園「第97回全国高校大会」出場を争う東京都第1地区予選の準々決勝が10月29日におこなわれた。台風22号の影響で豪雨の中、早稲田実業は早大学院との「エンジと黒」対決を15−5と逆転で制した。東京朝鮮は今季、都ベスト16に入るなど力をつけている都小山台から13トライを奪い81−0で快勝した。2大会ぶりの全国を目指す。
今季、新人大会と春季大会を制している目黒学院、7大会ぶりの出場を狙う本郷も勝ち進んだ。
東京朝鮮高部員が必死の水かきを続けた(撮影:見明亨徳)
早大学院NO8田中が先制トライを奪う(撮影:見明亨徳)
■早実が後半、逆転で早大学院に辛勝
東京朝鮮高グラウンドでおこなわれた試合。朝から降り続く豪雨でグラウンドの一部は「水没」し「あそこでラックになり顔を沈めたら溺れる怖れがある」(関係者)という状態。試合開始前から朝高ラグビー部員が必死で水かきを続けていた。
試合は前半から学院の入りがよくボールをつなぎ早実陣へ入る。ディフェンスも決まっていた。
5分すぎから早実が学院陣へ。反則を得るとタッチへ蹴りだしラインアウトからの展開を狙った。ところが約10分間に4回つかんだラインアウトも2回は投入ミス、2回は確保するもノックオンなど自ら機会を潰した。
先制は学院だった。前半終了間際5分間は学院が主導権を握った。29分、早実ゴール前で右ラインアウト。モールで押す。出たボールをNO8田中智幸がインゴールへ運んだ(5−0)。
5点リードを奪われた早実。後半は戦い方を変えてきた。「不確実なラインアウトにこだわらずボールを確保する」(大谷寛ヘッドコーチ)。
4分、学院22メートルの反則をタッチへ蹴らずスクラムを選択した。グラウンド左からのスクラム、ボールを短くつなぎ徐々に学院ゴールへ迫る。ラックからFL牛山朝陽が右中間トライラインを越え同点に追いついた。
その後、お互いに意地でぶつかり合う。学院が早実ゴール前に迫るも倒れ込みで届かず。そして、歓喜は早実に。17分、FL小川瑞樹が逆転トライを奪う。コンバージョン(G)も主将・中西亮太朗が決めて12−5。中西は25分にPGも成功し、15−5で同窓対決を制した。
学院・渡辺千明監督は「前半は0−0でも良かった。自信があったラインアウト→モールでトライしリードしたので、勝てると思った。早実のラインアウトは分析してきたし、ディフェンスも良かったが。後半、早実がアタックを変えてきたのにやられた。来季は規律のところを修正していきたい」と、あと一歩の勝利と第70回大会以来(27大会ぶり)の出場を逃し悔しさをにじませた。
辛勝の早実。大谷ヘッドコーチは「学院とは厳しい戦いになると話していた。きょうはコンディション、天候もあり前半をうまく戦いたかった。フォワード勝負で負けてしまった。後半、シンプルな戦い方へ中西を中心に選手は切り換えてくれた。学院と冬の予選で試合をしたのは自分が高3の時、1995年10月が最後。試合は負けたのでリベンジできて個人的には良かった。準決勝(東京朝高)もフォワード戦になるので修正したい」。昨年度決勝で敗れ(東京高に12−33)、花園を逃した思いをぶつけていく。
東京朝鮮高は自慢のラインアウト→モールで7トライ(撮影:見明亨徳)
■東京朝高がモールで小山台を粉砕
朝高が立ち上がりからフォワードがセットプレーを起点に都小山台を圧倒した。
前半5分、小山台陣で左ラインアウトを得るとモールで押し込みPR孫蒼伊がボールをインゴールへ置いた。9分には右ラインアウトをモールで押し順目へ展開、トライを奪う。13分には小山台が自陣ゴール前で回したパスをCTB崔豪然がインターセプトし中央へトライした。さらにスクラムからの1トライを加えたあと、23分には小山台22メートルの外側ラインアウト→モール、インゴールまで押し込んだ。2分後にもラインアウト→モールで追加した。Gは前の試合で不調だったCTB洪洋極が豪雨の下で確実に決め、前半で6T3G、36−0と試合を決めた。
後半も7トライを決め計13トライ、81−0で4強入りした。13トライ中ラインアウト→モールから7トライを取り切った。
邵基学(ソ・キハク)監督は試合後、グラウンドの水かき作業を指示していた。「きょうは一つ一つプレーの精度を高めていこうと生徒に話した。得意のモールでトライを取れたので安心。次の早実は天候が良ければボールを回してくるのでディフェンスが大切になってくる。まずは早実の分析をする」。
両校と決勝であたるもう一つの準決勝は目黒学院×本郷。
第2地区の準決勝(國學院久我山×明大中野、東京×保善)とともに11月5日、江戸川陸上競技場でおこなわれる。
(文:見明亨徳)