昨シーズンは鮮烈な登場だった。
トップリーグデビューとなった第10節ヤマハ発動機戦で、途中出場からいきなり初トライ。
以降はセンターの定位置を確保し、第15節までの5試合で3トライ。
その全てがチームにとってのファーストトライだったのだから、鮮やかだった。
「昨シーズンは1年目ということもあって、なにも考えずに思いきりできました。今シーズンは、アタック、ディフェンス共に、まずまずという感じです」
本人は謙虚にそう自己分析するが、2年目の今シーズンは第8節を終えて7試合に先発中。欠かせぬ戦力としてチームに貢献している。
天理中・高を経て関西大学に進んだ24歳は、この日、勝利の喜びを満喫している様子だった。
「コーラさんも展開してアグレッシブにくるチームです。今日はフォワードを中心に(試合を)作って、フォワードで圧倒するというところはできました」
開幕節の話題をさらった近鉄ライナーズの劇的“サヨナラ”ドロップゴール――あの日を敗者の側で味わってから、約2か月。
開幕7連敗を喫していた豊田自動織機シャトルズが、10月14日、静岡・エコパスタジアムで同じく0勝7敗のコカ・コーラレッドスパークスと対戦。
鋭いディフェンスを土台に、フォワードが力量差を披露するなどして6トライ47得点。
ホームゲームで待望のシーズン初勝利を手にした。
「織機はしっかり前に出るディフェンスから、ターンオーバーしてボールを動かす――ディフェンスからしっかりやるチームだと思っています」
そのディフェンスこそ、CTB松本の得意分野。この日も的確なタックルを披露した。
一方で、笑いを取るのは得意ではないという。
関西出身の“大物”お笑い芸人とは一文字違い。
関西(奈良)出身でこの名前だから、メリットもあればデメリットもある。
「初見で名前を紹介したら、絶対に憶えてもらえるというのは大きなメリットかなと思います。デメリットは、僕は正直おもしろくはないので(笑)。なにかおもしろい話をしてほしいと言われたらかなり困る、というのがデメリットというか(笑)。相手がビッグネームなので」
昨年の『ジャパンラグビートップリーグ2016-2017 OFFICIAL FANBOOK』(選手名鑑)。
自身のプロフィール欄外にあるひと言コメントは、「名前負けしない活躍を期待」だった。
それが今年のオフィシャルファンブックでは「昨季大活躍。全試合出場目指す」に変わった。
笑いではなくトライを取る――豊田自動織機の松本“仁”志の存在が、広く知られつつある。
次節は10月21日、トヨタ自動車ヴェルブリッツと愛知・パロマ瑞穂ラグビー場で対戦。
“トヨタダービー”だ。
「この一勝が織機としても自信になったと思います。次は好調なトヨタ自動車さんなので、ディフェンスでしっかり止めて、いい流れをもっていけるようにしたいです」
信頼の厚いディフェンスのみならず、度胸満点の突進、ラインブレイクから走り切るスピードを武器に、伸び盛りの24歳がダービーマッチに臨む。
(文:多羅正崇)