33−10と勝ちはしたが、喫した10失点目が悔やまれた。
10月14日、東京・秩父宮ラグビー場。関東大学対抗戦Aの3試合目に挑んだ早大は、26−5とリードして迎えた後半21分に自陣ゴール前右で相手ボールスクラムを迎える。昨季の山下大悟監督就任以来、強化に時間をかけてきた領域だ。
もっともこの日は、そのスクラムに難儀していた。実際、この場面でも、相手の右PRである薄井諒介に塊を割られた。先頭でその薄井と対峙する早大の左PR、鶴川達彦は、「修正しきれなかった」と認めた。
自軍の最前列はFW第3列から転向初年度という3年生の宮里侑樹がHO(2番)に入り、右PR(3番)は1年生の久保優が務める。鶴川も大学に入ってから左PR(1番)を始めたとあって、こう続けるほかない。
「早大の1〜3番はまだ経験が浅い。いろいろな組み方をしてくる相手に、まだ対応しきれていない部分もある。いろいろと経験していくなか、3人の引き出しを増やしていきたいです」
身長181センチ、体重115キロ。大学選手権最多優勝回数を誇る早大の門を叩いた。出身の桐蔭学園中等教育学校は、全国大会で覇権を争う桐蔭学園高とは別学校。鶴川が全国レベルの争いに加わったのは、大学からである。
転機は昨季の転向。従来のFW第3列からPRに挑み、山下監督と一緒に就任した伊藤雄大スクラムコーチのもと日々、組み込んだ。ラストイヤーの今季も、春に右PRを経験。相手側にとって嫌な左PRの像も垣間見たようだ。
「3番にとってどういう1番が嫌なのかがわかった。その意味ではよかったです」
PR1本で来たライバルとの経験値の差を、必死で埋めようとしている。スコア上は快勝もやや苦しんだであろう筑波大戦後も、視界は良好だとアピールした。
「体重などは(他校に)負けていない。あとは経験と技術を…」
10月28日、大学選手権8連覇中の帝京大とぶつかる。夏の練習試合で0−82と屈しているが、このままでは終わりたくないだろう。
(文:向 風見也)