昨シーズンから負け知らずのディフェンディングチャンピオン、サントリーサンゴリアスが、世界的名将のジェイク・ホワイト監督が率いるトヨタ自動車ヴェルブリッツに苦しめられ、ラスト20分の時点で18点ビハインドの厳しい状況に追い込まれたが、底力を発揮して3連続トライで逆転し、32−31で熱闘を制した。
レッドカンファレンスの首位に立つサントリーはこれで8勝0敗(勝点38)。同組で2位の神戸製鋼コベルコスティーラーズ(勝点28)を追うトヨタ自動車は、5勝3敗(勝点24)となった。
10月15日、京都・西京極総合運動公園でおこなわれたトップリーグ第8節。
ファーストトライを奪ったのはトヨタだった。前半31分、主将のFL姫野和樹とHO彦坂圭克の力走で敵陣深くに入り、たたみかけ、SOライオネル・クロニエからのキックパスを右外でキャッチしたWTB小原政佑がインゴールに飛び込んだ。
しかし、その後まもなく、クロニエが不当なプレーで10分間の退出となり、数的有利のサントリーは34分、FLツイ ヘンドリックがゴール前のピック&ゴーでトライを挙げ、逆転。PGの本数が多かったサントリーが13−10とリードして前半を終えた。
それでも、ハーフタイム前にサントリーのNO8ジョージ・スミスにイエローカードが出ていたため、クロニエが戻って逆に数的有利となったトヨタは後半すぐに流れを変えた。
43分(後半3分)、トヨタはラインアウトからモールで前進し、ボールを出して、SOクロニエがタテに勝負しトライ獲得でゲームをひっくり返した。さらに51分、クロニエがインターセプトから大きくゲインし、CTBイェーツ スティーブンがサポート。サントリーは快足のWTB松井千士が懸命に食い下がったが、イェーツが粘り腰でインゴールに押さえ、追加点を挙げた。勢いが止まらないトヨタは、リスタートのキックオフボールをHO彦坂が確保し、その後、FL姫野が中央突破、SH平野航輝がサポートしてゴールに持ち込み、3連続トライで13−31と18点差に広がった。
しかし、前王者はしぶとかった。ラスト20分で怒涛の反撃を見せる。
61分、15フェイズを重ねてCTB村田大志がトライ。65分にはSH流大がインゴールに飛び込み、6点差とした。ポストほぼ正面のコンバージョンキックをCTB中村亮土が焦ったか、ドロップゴールで狙って失敗したのは誤算だったが、74分、ゴール前のスクラムからNO8スミスが持ち出してゴールに迫り、密集から突っ込んだLO飯野晃司のトライが認められ、1点差。そして、SO小野晃征がコンバージョンキックを確実に決め、逆転した。
トヨタは試合終了間際、ゴールポストまで約45メートルの位置でPGチャンスを得、クロニエが狙ったが、わずかに届かず、勝利の女神はサントリーに微笑んだ。
同じレッドカンファレンスでは、東芝ブレイブルーパスが4勝目を挙げて4位に浮上した。福島・いわきグリーンフィールドでNTTドコモレッドハリケーンズと対戦し、32−18で勝利。
東芝は前半10分、モールからルーキーのSH藤原恵太が持ち出しタックラーをかわして右にスペースを作り、WTB宇薄岳央の先制トライを演出した。38分には戦列復帰した主将のCTBリチャード・カフイがゴール前の密集から飛び込み、追加点。17−3で折り返した。
連敗を止めたいドコモは52分(後半12分)、CTBパエア ミフィポセチのパワフルランでチャンスとなり、ボールを継続して、新人のNO8秦啓祐が左大外からゴールに持ち込んだ。57分にはPGで加点し、6点差となる。
しかし、東芝は65分、ラックでアウトになったボールをNO8リーチ マイケルが確保し前進、CTBカフイ、SH藤原とつながり5点を獲得した。
粘るドコモは69分、FBリアン・フィルヨーンが防御網を切り裂いてトライを挙げ、キック成功で4点差としたが、東芝はリスタートのキックオフボールをWTB石井魁が確保し強気のランでゴール前左に迫り、CTB松延泰樹につないで得点、流れを引き戻した。
東芝は試合終了間際、HO橋本大吾が相手に3本差をつけるチーム5トライ目を挙げ、ボーナスポイントも獲得している。
東芝は4勝4敗(勝点19)、NTTドコモは3勝5敗(勝点12)となった。
ホワイトカンファレンスで3位のリコーブラックラムズは、西京極で近鉄ライナーズと対戦し、37−10で下して5勝3敗(勝点25)となり、2位のヤマハ発動機ジュビロ(勝点30)を追走している。
PGで先制したリコーは前半21分、FWが敵陣22メートルライン内での相手ボールスクラムをターンオーバーし、BKに回してCTB濱野大輔がトライを奪った。32分にはゴール前でSH山本昌太が間隙を突き、NO8松橋周平につないでフィニッシュ。
CTBタマティ・エリソンのゴールキックで確実に加点し、23−3で迎えた57分(後半17分)には、ラインアウトモールからゲームキャプテンのFL武者大輔が抜け出してトライを挙げ、勝利を引き寄せた。
その後、近鉄のWTB森田尚希にゴールラインを割られたリコーだったが、フルタイムを報せるホーンが鳴ったあと、自陣深くのディフェンスで相手の落球を誘い、カウンターでCTBアマナキ・ロトアヘアがゴールに持ち込み、トライボーナスポイントも手に入れた。
敗れた近鉄は3勝5敗(勝点12)。
ホワイトカンファレンスで4位につけるNECグリーンロケッツは、ホームの千葉・柏の葉公園総合競技場でクボタスピアーズと対戦し、28−27で競り勝った。
14−10で始まった後半の立ち上がり、追いかけるクボタが、CTBシオネ・テアウパのしなやかな走りと、CTBマット・サンダースのインターセプトからの独走で連続トライを挙げ、逆転。14−24となった。
しかしNECは53分(後半13分)、SO森田洋介からのキックパスでボールを手にしたWTB釜池真道がゴールに持ち込み、コンバージョンも決まって3点差に詰める。
その後、クボタがPGで6点差としたが、NECは62分、敵陣深くでのスクラムからのアタックでFL大和田立がトライを挙げ、SO森田のコンバージョンも決まって逆転。
クボタは試合終了前の最後の攻撃で19フェイズを重ねたが、NECが1点差を守り切った。
NECが4勝4敗(勝点17)と星を五分に戻した一方、クボタは3勝5敗(勝点14)となった。
そのNECを追うキヤノンイーグルスは、コカ・コーラウエスト広島スタジアムで宗像サニックスブルースと対戦し、24−22で逆転勝利を収めている。
連敗のトンネルから抜け出したいサニックスが、WTBカーン・ヘスケスとFL濱里祐介のトライなどで前半を8点リードで折り返し、1点差に詰められたあとの50分(後半10分)には、ラインアウトからのモールドライブにヘスケスも加わってPRヘンカス・ファンヴィックがインゴールになだれ込み、再びリードを広げた。
しかしキヤノンは55分、ハーフウェイ付近でSH天野寿紀のボックスキックをCTBハヴィリ リチャードアファがキャッチしてWTBホセア・サウマキに渡し、赤いジャージーの11番はノンストップで約45メートルを走り切った。コンバージョンも決まって21−22と1点差。
その後、互いに譲らず終盤に突入し、それまで規律よく守っていたサニックスだったが、71分に自陣で反則があり、キヤノンのCTB三友良平が約40メートルのPGを決め、逆転。
サニックスは残り時間30秒を切ったあと、敵陣10メートルライン付近でアドバンテージをもらい、CTBアンドレ・エスターハイゼンが大きくゲインして22メートルラインを越えると、レフリーから「アドバンテージ・オーバー」の声が発せられ、直後、右タッチライン際でつなごうとしたサニックスのパスは乱れて、キヤノンが逃げ切る結果となった。
キヤノンは開幕5連敗のあと3連勝(勝点13)、宗像サニックスは7連敗(1勝、勝点6)となった。
11月はインターナショナルマッチ期間のため、ジャパンラグビートップリーグは次節が中断前最後のゲームウィークとなる。
マン・オブ・ザ・マッチに選ばれたキヤノンのホセア・サウマキ(撮影:Hiroaki. UENO)