今季初のマン・オブ・ザ・マッチに輝いた天理大NO8のファウルア・マキシ
関西大学ラグビーAリーグは10月8日、京都市の宝が池球技場で第2節第1日があり、連覇を狙う天理大が関西学院大に47−0(前半7−0)と圧勝。開幕連勝として首位に立った。1敗同士の対戦は近畿大が摂南大を53−19(前半24−7)で下し、今季初勝利を挙げた。
前年6位の関西学院大が王者・天理大を前半7−0と苦しめる。
手段はハイパントだった。
SO山田一平(4年・東海大仰星)が右足から「30メートル先、4秒後」と理想的なキックを使う。
ハイボールに飛びつくのは181センチ、87キロのCTB金淳英(きむ・すにょん/4年・大阪朝高)であり、184センチ、101キロのWTB鮫島魁(4年・尾道)だった。
後半28分以降、金は山田のハイパントを立て続けに2本キャッチした。
「気持ちよかったです。流れに乗って、相手にアタックをさせないつもりでした」
母校・早稲田大でコーチ経験もあるスポーツライターの藤島大は言った。
「弱いチームが勝つには戦術を絞るべきだ」
迷わない。意思統一による弱者の結束が番狂わせを呼ぶ。ラグビーやボクシングなどで幾多の勝負を見て来た男の言葉は正しい。
先発15人の中で、世代の日本代表は3人ずつ。天理大はジュニアジャパン、関西学院大はU20である。ただし、関西学生代表は5人対1人と劣勢。
直近2年の成績にも差がある。天理大の優勝、準優勝に対して、関西学院大は6位と8位。
熟慮の上で戦法が決まる。
もちろん、ハイパントは弱者の作戦ではない。効率よくエリアを取れる上、ボールを再獲得できる可能性はある。
相手は一旦、後ろに戻らねばならず、ディフェンスがやりにくい。
関西学院大の思惑通り、前半40分が来ても0−0だった。
しかし、後半44分、敵陣10メートル付近でターンオーバーを食らい、最後はFL島根一磨(3年・天理)にインゴールを飛び込まれる。悔やまれる失点になる。
後半、2年間低迷しているチームの精神力、体力は続かない。6連続でトライを奪われた。
2期目の初年度となった牟田至監督は、コンタクトフィットネスの差を口にする。
「体を当てすぎましたね。向こうはフェイズを重ねるとフィジカルの強さが際立ってくるので、ハイパントを使いました。ギャンブルだったかもしれませんが、ギリギリ勝つ、というのを狙っていました」
小松節夫監督はにこやかだった。
「関学はスクラムとハイパントで来ると思っていた。ハイパントはどうしようもないよね。ウチは下手やし。向こうはデカい選手をそろえて飛んでくる。0−0で終わってたら、後半バタバタしてたかもしれん。まあでもスクラムがしっかりしてくれてたしね。それがよかったと思います」
4年生フロントロー、西川和眞(天理)、藤浪輝人(伏見工)、木津悠輔(由布)はスクラムで前半4回のコラプシングを奪った。後半30分にはスクラムトライも記録する。
今年5月5日、関西学院ラグビー祭のメインゲームとして戦った時は69−14と大勝した。差は詰めさせなかった。
マン・オブ・ザ・マッチはNO8ファウルア・マキシ(3年・日本航空石川)が今季初の受賞をした。
トライは後半41分の1本のみ。その前に賞は決まっていた。
14−0の後半8分、ゴール前で島根からパスを受けるとぶちかます。できたラックから素早く抜けるともう一度ラインに入る。SH藤原忍(1年・日本航空石川)のパスをWTB中野豪(3年・常翔啓光学園)につなぎ、トライを生み出させた。
「そういうプレーが好きです。慣れています。代表にいったらやらないといけません」
ジュニアジャパンに選ばれたことがプラス作用する。
トンガ人留学生特有の派手なパワープレーも、地味な下働きも両方できる。
リーグ戦運営の責任者、高見澤篤大学リーグ委員長(立命館大GM)、中尾晃副委員長(同志社大副部長)はうなずき合っていた。
「彼は実に献身的だ」
この2チームの次戦は10月15日。天理大は摂南大、関西学院大は近畿大とそれぞれ大阪・鶴見緑地球技場で対戦する。天理大は開幕3連勝、関西学院大は今季2勝目を目指す。
第2節の残り2試合、京都産業大対関西大、同志社大対立命館大は10月14日に宝が池球技場で行われる。
(文:鎮 勝也)