「元気よく、走って、タックル! 自分のできることは変わらないので、精度を上げることだけ考えてがんばります」
10月7日のトップリーグ第7節、サントリーがサニックス相手に45−0と大勝を納めた試合後に、大きな声と笑顔で話してくれた。
社会人1年目の飯野晃司が、2節連続で先発出場を果たした。8連覇を遂げた帝京大の中核選手。春にサントリーに合流し、練習初日(!)に左足を痛めて以来、半年ぶりの復帰すぐの連続起用には、チームの期待がうかがえる。
「チャンスをもらっている身なので、とにかく与えられた位置で貢献したい」
前々週のBマッチ出場(9月16日)を経て迎えた6節(10月1日)はNTTドコモに69−7。トップリーグ初先発で、後半15分の交代まで背番号5を着け55分間プレーした。第7節ではFLとして先発フル出場。他の選手交代があった後半途中からは、4番の位置に入った。LO、FL、LOとポジション変更に柔軟に対応し、コンスタントなプレーを見せている。
「自分としてはLOでもFLでも、そんなにやることは変わらないと感じています。ディフェンスとブレイクダウンをしっかり。その精度、質を上げていきたい」
昨年に続くトップリーグ連覇を狙うチームにおいては層の厚いポジションでもある。
「ウィーラー、かべさん(真壁伸弥)、ジョージ(スミス)……とにかくすごい見本がたくさん目の前にある環境です。リハビリ中から刺激をたくさん受けてきました。たとえばジョージは、プレーの細かいカラダの使い方まで、練習中の場面場面で丁寧に教えてくれます。これからの成長は、自分がどれだけ吸収できるのかにかかっている」
ケガ明けのBマッチ戦では20分間、次いで6節では55分間、この日は80分間を走り切った。その姿は、痛いプレーや場面を求めて探し回っているかのように見える。
「最初の試合は短い時間だったからディフェンスだけを考えていればよかった。トップリーグでは長い時間出ることができたぶん、時間帯によって流れや、状況の変化がありました。そこに対応したプレーが求められます。試合って、最初に決めていたこととは違う場面が次々出てきますよね。きょうは、自分の動きそのものが落ちてしまった時間帯もありました。そういう意味でも質を上げていきたい」
タックルなら、自分なりに「いける」と感じられる場面があるという。まずはディフェンスを足掛かりに、もっと自分のレベルを引き上げたい。連覇を目指すチームに貢献したい――ルーキーは復帰直後から、謙虚ながらも意欲満々だ。
次節10月15日は、トヨタ自動車との対戦。帝京でLOコンビも組んだ同期、姫野和樹との直接対戦もあるかもしれない。
「向こうは1年目でキャプテンですからね。連絡は取り合っていて、戦えたらいいねという話も出ます」
今後の抱負をたずねると、返ってきたのが冒頭の言葉だ。いまは目の前のプレーに集中する。シンプルなプレーの一つひとつに、新たな深みを感じ取りながら。
(文/成見宏樹)