ラグビーリパブリック

安田司、王者・帝京大で得た「受け身にならない」の感覚。

2017.10.01

日体大戦、スクラムで押す帝京大のFL安田司(撮影:松本かおり)

 大学選手権8連覇中の帝京大は、9月30日、東京・秩父宮ラグビー場で加盟する関東大学ラグビー対抗戦Aの2戦目に挑む。日体大の出足の鋭さに手を焼いていた序盤、気を吐いた1年生が安田司である。
「試合前から、自分の目の前のことに思いっきり行こうというテーマを持っていました」
 前半7分頃、自陣10メートル付近右の接点に身体をぶち当てる。攻守逆転。その直後には自陣深い位置からのランで魅し、続く16分には、敵陣ゴール前でのラック連取の止めとして勝ち越しトライを決めた。スコアを7−3としたこの場面について、当の本人は静かに振り返る。
「ただぶつかるのではなく、(相手の芯を)ずらすという練習をしてきていた。きょうの試合でもそれを活かせたらいいなと思っていました。それがトライにつながったので、よかったです」
 その後もオープンサイドFLとして相手の腰元へのタックル、突進などの職務を全うする。身長180センチ、体重108キロのこの人は、ひたすら身体をぶつけるのが好きなようだ。もっともチャンピオンチームのレギュラー候補らしく、計74分間のプレーをこう反省した。
「個人としても、課題だらけで…。視野が狭くなって、(防御ラインのなかで)横の選手と『誰にタックルに行く』といったコミュニケーションを取ることができていなくて、先輩たちに任せてしまったところがあった。1年生だからできないというのではなく、チームの代表として力をつけていかないといけないです。明日から、この試合を活かして努力をしていきたいと思います」
 
 大阪・常翔学園高の2年時、チームで帝京大の練習へ出向いたことがある。もともとテレビ番組などで知っていたこのクラブの特徴を肌で感じ、岩出雅之監督からの誘いを受けることにした。
「4年生が雑用などをしていて、1年生は余裕がある分、成長できる。そこに魅力を感じました。他の大学に行くことも考えたのですけど、高校の監督、家族とも相談しても『帝京が一番、合っているのではないか』となり、最後は自分で決めました」
 入学するや、関東大学春季大会で3度の出番を得る。当初は「上級生に任せっぱなしだった。チームに迷惑をかけてしまっていた」と、白星を重ねるなかでも下を向いていた。しかし、成長のきっかけも得ることができた。
 5月28日、山梨・中銀スタジアム。前年度の大学選手権決勝と同カードとなった東海大戦で、安田は背番号7をつけて先発した。日本代表でもあるテビタ・タタフらに真正面から刺さる。31−28と接戦を制したこの日、ひとつの答えを見つけたようだった。
「受け身になってしまったら(局面での競り合いで)負けると、春にわかりました。ただ、東海大との試合で少し自信がつきました。その後、夏以降もいろいろな経験をさせていただいたのですが、これからのシーズン、絶対、受け身にならず、自分からやっていきます」
 グラウンド外では、岩出監督のミーティングやしばし開かれる社会人の講話などを通して「考えること」を意識し始めたという。
「僕は人前で話すのが苦手で、いま、それを克服するために常に考えることを意識しています。高校の頃なら惰性でものを言っていたりして、いまもだいぶ、苦しんでいるのですが…。学生のうちからこうして考えていたら、社会でも信頼される人間になれる、と」
 秋から冬にかけ、メンバー争いはさらに激化するだろう。そんななか、自発性が大事だと知ったルーキーは「今年は自分づくりにフォーカスして頑張っていきます。最終的には、大学選手権優勝に貢献できるようにしたい。4年間は、12連覇です」と決意を明かす。
(文:向 風見也)
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