ラグビーリパブリック

人生初のSOでつかんだ今季2勝目。東芝・大島脩平、「これで変わる」。

2017.09.30
今年で7年目の大島脩平。決勝トライの豊島翔平とは同期入社の仲。
(撮影/松本かおり)
 確信のキックだった。
 東芝ブレイブルーパスが5試合ぶりに勝利を挙げた。9月28日、秩父宮ラグビー場で豊田自動織機相手に19-17。後半38分にWTB豊島翔平が右中間に殊勲のトライを決めた。
 キックパスを受けて歓喜の瞬間を呼んだ豊島。そのキックを蹴ったのが大島脩平だった。この日は怪我人続出の中で背番号10を背負って先発した。公式戦でのSOは「ラグビーキャリアの中で初めて」のことだ。
 今年になって、練習ではときどき司令塔の位置に入ることはあったが、それ以外では、シーズン開幕直前のプレシーズンマッチで途中から務めたことがあるくらい。「(考えることが多くて)いつもより疲れた」と笑った。
 逆転のシーンはスクラムから生まれた。3点ビハインドで迎えた好機。左中間相手ゴール前でFW同士が組み合った。
 互いの8人がヒットする。押し合う。崩れた。レフリーは豊田自動織機のコラプシングと判定するも、危険な状況ではなかったため、アドバンテージをとる。その中でSHからのパスを受けた大島は迷わず右へ、弾道の低いキックを蹴った。
「豊島と話していたんです。(うちのFWは)スクラムでペナルティーをとってくれるぞ、と。で、アドバンテージが出たら蹴るよ、と伝えました」
 西京極中、京都成章高校、関東学院大学を経て入社して7年目。もともとSHも、現在はWTBでの出場が多い。経験値が高い。
 初めてのSOで80分プレーした。普段立っているアウトサイドでは感じられないこともあった。
「やっぱり練習とは違う。あらためてそう感じました。例えば順目にフェーズを重ねると(練習ではいるはずの)FWがいないんですよ。相手より立ち上がるスピードが遅かったり。そんな中でボールを外に回したところもあったので、なかなかうまくいかなかった」
 黒星が先行する今季。この試合ではトライを重ねて勝ち点5を獲得するため、自陣から攻めるスタイルで臨んだ。
 そんな背景もあって、FWはいつも以上に走る量が増え、試合途中から運動量が落ちてしまった。それが苦戦の原因のひとつにもなった。
 なかなか波に乗れない名門。遠慮なく意見をぶつけ合うことが必要な気がしている。
「やっていて気づくことがあったんです。今日はパスをつないで攻めていこうとしたのですが、うまくいかない。考えてみれば、東芝にはパスがうまい人は、そんなにいないんです。パスでどうにかしようとして、ボールキャリアーがいい体勢になれず前に出られなかった。途中で入った渡邊太生さん(CTB)がタテに出てくれるようになって、だいぶ変わりました」
 FWとBKの関係性も、もっと密になると思う。
「(きょうのような戦い方だと)BKはFWにもっと動いてほしいと思うでしょう。FWもBKのミスや判断に『なんで』と感じたこともあったはずです。そういうところを、もっと歩み寄らないといけない。そして戦術は戦術として、個々の強みを出していく場面もあっていいと思うんです。カウンターに強みがあるなら、それを出す機会をうかがっておいて、行くときは行く。そういう判断をしたときに、そうじゃないだろう、というような声が出ると自由さがなくなる。そういう声がチームの中核の人から出ると、その影響力は大きいんですよ。そうでなく、全員が様々な局面に対応できる準備をいつもしておいて、仕掛ける人は責任をもってやることが大事だと思う」
 苦しみながら手にした今季2勝目は、チームを前進させる大きな勝利。
「今日は勝って反省できるので、これでいろんなことがうまくいくようになるんじゃないでしょうか」
 リーダー的立場にもある男はそう感じている。
Exit mobile version